スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

プライベートでは、20歳、15歳、10歳の3人の子育て真っ最中です。それもあってか、「どうしてそんなにパワフルに働き続けられるのですか?」と、ご質問を受けることもたびたびあります。
答えはとってもシンプルですが、子供は育てなくちゃならないもの! ひとり増えれば、その分働かなくてはいけない――夫も働いているとはいえ、必死です。  

 

自分が経験したということもありますが、女性は特に、結婚や出産のタイミングが、キャリアのステップアップと重なることが本当に多いと思います。そのため、「30代で役職につかなきゃ」「40代のうちにこのくらいの年収を達成しないと」と、世間一般のものさしで測ると、――働き始めてわずか20年以内に何かを成し遂げないといけない。そんなキャリアプランにさえ、なってしまうものです。
でも、そういう働き方や考えは、自分を追い詰めてしまうだけ。

私は、キャリアメイクに関しては、人生を3つのステージに分けて考えるようにしていますし、それを皆さんにも提案したい。
何歳まで働きたいかを考えて、その期間を3つに区切って、それぞれの時期、どうしていきたいかを考えてキャリアメイクすればいいのです。
ちなみに私が、日本女性の平均寿命である87歳まで生きたとしたら。スローダウンは当然するでしょうが「死ぬまで」働きたいと思っています。もちろん、「仕事からの引退」は人それぞれのタイミングで良いのですが。私の場合、逆算すると、なんとなく40歳くらいまでがひとつのステージ、40歳から70歳くらいまでがふたつめのステージ、70歳からがラストステージ――とキャリアのステージが見えてきます。もちろん、寿命は誰にもわからないし、このキャリアプランが今後変わっていくこともあると思います。
第1のステージは、視野に入るものやことを、精一杯こなしていく時期。私は、虫のような目線の時期と、たとえています。全体像が見えないことに不安になるのではなく、今の自分の視界に入る仕事をひとつひとつ丁寧に、また必死にクリアしていくことで見えてくるものが、必ずある。新人編集者時代とフリーランスで働いた二十年近く。私自身、この時期頑張ったことは、現在の仕事に確実に繫がっています。
次の第2ステージは、第1ステージで積み重ねた、得意なことや好きなこと、周りから認めてもらえることを形にし、そしてそこで学んだこと、得たことを社会に還元していく時期だと捉えています。このころには、鳥のような視点で、俯瞰で自分や物ごと、社会や経済を見られるようになってきているはず。
今の私はこの第2ステージですが、自分自身の経験を踏まえても、女性がキャリアを築いていくためには、家族の協力が欠かせません。時には、夫婦のキャリアメイクを個々に考えるのではない「ファミリーキャリア」という考え方も欠かせないと感じています。
我が家も数年前には、5年間ほど、私が大黒柱として働き、夫が専業主夫として家事や育児を担っていました。その時期は、家や子供のことは一切彼に任せて、できるだけ口出しはしませんでした。たとえ、彼が作ってくれる料理に野菜が足りないように思えたり、子供のテレビを見る時間や勉強のさせ方について、気になることがあったとしても……。彼のやり方をリスペクトしようと思ったのです。現在は、夫も新しい事業を始めていますが、私自身はこの第2ステージで、自分の知識や経験を、もっともっと社会にお返ししていきたい――頭のなかは、いつもそんなふうに考えています。
そしてラストの第3ステージは、とことん好きなことを突き詰めていく時期――もっともっと自分の内側の核となる部分、エッセンシャルな部分と向き合っていくイメージです。私の場合、いまのところは、70歳からがこのステージです。
こんなお話をすると、「そんなに働くの?」なんて驚かれるのですが、私はそうしたい。
70歳からやりたいことなんて、まだわかりませんが、第1ステージを経て、こうして皆さんにお伝えしたいこと、やりたいことがあるように、第2ステージを積み重ねていけば、その先の目標が必ず出てくる。――そんなふうに考えてきましたし、そう信じています。
もちろん、この先、キャリアメイクのステージが、もうひとつ増えるかもしれません。
だけど、こんなふうにキャリアを長い時間軸で考えてみると、周りと比べて焦る必要なんてないし、自分自身に常にフォーカスすることで「するべきこと」が見えてくる、そう思っています。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

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