インフルエンザのワクチン接種はしなくてもいい?


――今年もインフルエンザの予防接種が始まっています。しかし、去年はインフルエンザの感染者が例年の1000分の1ともいわれるほど大幅に減ったので、「もう打たなくていいんじゃないか」という声も聞かれるのですが。

山田 確かに、結果的に流行しなければ打たなくてよかったかもしれない、という話になりますよね。しかし、こればかりは予想が難しいもので、去年流行しなかったからといって今年も大丈夫だろうとはいえません。これは予防医療全体にも言えることなんですが、基本的にワクチンは未来への投資と考えてほしいと思います。

例えば自動車のシートベルトも、交通事故に遭うから締めるというものではなく、万が一事故に遭った時に怪我を防ぐためのものですよね。インフルエンザワクチンもそれと同じで、インフルエンザが流行った時に感染して苦しむことを防ぐために打つというもの。ですから、あくまで未然に防ぐという考えのもとで、毎年打つことをおすすめします。

一青 子どもも同様に接種したほうがいいですか?

山田 そうですね。インフルエンザは新型コロナのように必ずしも年齢に相関して重症化リスクが増えるものではありません。むしろ大人よりも年少の子どものほうが重症化するリスクや合併症をきたすリスクが高いこともありますから、ワクチンを打つことはとても大事です。同様に重症化しやすい高齢者や妊婦さんもインフルエンザワクチンを打つことをおすすめします。

また、SNSで時々受ける質問が、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種することができるのかということ。これは原則として同時に接種することは推奨されておらず、日本では今のところ間を2週間空けることになっています。

例えば、11月1日にインフルエンザワクチンを受けたら、新型コロナワクチンは11月15日以降となります。その逆も同様です。

 


新型コロナ治療薬はできている?


一青 新型コロナは、インフルエンザでいうタミフルのような治療薬がないことも不安の大きな理由です。現在の研究開発の状況はどのようになっているのでしょうか。

山田 治療薬に関しては、実は大きなアップデートがありまして、アメリカの大手製薬会社のメルクが「モルヌピラビル」という薬を開発しました。世界初の新型コロナウイルスの飲み薬で、発症から間もない時に1日2回、5日間飲み続けることで、重症化するリスクを50%ほど減らすことが臨床試験でわかっています。

先日、イギリスにて世界で初めて承認されたことが話題となりましたが、米国食品医薬品局(FDA)でも緊急使用許可の申請がなされていて、承認を受ける可能性が高いと思います。日本政府も承認申請されれば年内にも特例承認し、調達する方針だそうです。

これまで治療薬といえば、レムデシビルなどの注射薬しかなく病院でしか使用することができませんでしたが、モルヌピラビルは飲み薬ですから自宅でも治療が可能になります。入院せずに早い段階で治療ができるため重症化を抑えられる可能性が高まって、結果として入院患者を減らす効果も期待されています。

 

構成/中川明紀

 

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