認知症のお年寄りを看ている家族・介護職がよくぶつかるのが、「お年寄りが〇〇してくれない」問題です。

食事、外出、介護サービスなど、周囲はいろいろ気を遣って準備するのですが、当のお年寄りが「食べたくない」「出たくない」「いや!」と言って断固拒否……なんて課題に、もしかしたらあなたも直面しているかもしれません。

どうすればそんな問題を解決へと導けるのか? ヒントをくれるのが、福祉・介護の現場で20年以上経験を積み、現在はセミナー講師として活躍する渡辺哲弘さん。著書『認知症の人は何を考えているのか?』で彼は、認知症の人の「不可解な行動」は、その人の「気持ち」を想像して関わればきっと解決できると書いています。

今回は渡辺さんが紹介する多数の事例のなかから、入浴拒否を解決したケースを抜粋して取り上げつつ、「気持ちを動かすケア」について詳しくご紹介します。

 


その人の「気持ち」を 想像してみよう 


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マンガで見ていただいたのは、介護者がよく直面する認知症の人の「入浴拒否」の事例です。この施設ではうまく解決できました。それにしてもタナカさん、なぜ急にお風呂に入ることにしたのでしょう? 答えは簡単。入浴したいという「気持ち」になったからです。人が行動を起こすとき、その背景には必ず「気持ち」があります。認知症の人だって同じです。 施設の職員は、タナカさんという「人」の「気持ち」に寄り添った関わりができていました。だからうまく入浴へと誘うことができたのです。


たとえばみなさん、旅行のパンフレットを見てなんとなく「旅行に行きたいなあ」と感じ、頭のなかでちょっと計画を立ててみた、なんてことはありませんか?「心が動くと体も動く」、それが「人」という生き物なのです。

認知症は「その人」の一部分にすぎません。認知症の人が「何日も入浴しない」などといった、私たちから見ると「不可解な行動」をするときにも、必ず「人としての気持ち」が背景にあります。そして、その「人としての気持ち」に合わせて働きかけたり、その気持ちに寄り添った関わり方をすることが、認知症ケアではとても大切なんです。