子どもに対して親が最低限すべきこと
「早寝早起き朝ごはん」と「十分な睡眠時間」。つまり「規則正しい生活」の重要性を再認識した山中さんと成田さんは、その延長で運動についても言及します。そのなかで、子どもに対して親が果たすべき大事な役割を見出すのでした。
成田 山中君、走るのも続けてるんだってね。
山中 走るのは、もうずっとやってるかな。特にこのコロナで、こころも体も整えるためにも、やっぱり走るってことは非常に大切にしています。ただ、マラソン大会がなかなかないから。この、目標のない日々っていうのが結構大変なんだけど。
成田 平均でどのくらい走るの?
山中 一日平均1時間は最低走ってるかな。距離でいうと十数キロ。
成田 すごいなァ。私は歩くしかできない。でも大学生のころよりかは、ずっとよく歩いてるかな。運動してますよ。ただ、絶対走れへんけど。
山中 走らなくていいんです。歩くのがいいと思うよ。
成田 あ、トライアスロンとかもやってませんでした?
山中 うん。医学部の6回生とか、研修医のときにやっていましたね。
成田 やってた、やってた。何が楽しいんだ? と思ってたけど。
山中 走ってるときは苦しいねん。二度とやるかと思うときもあるし(笑)。けどなあ。終わった後の達成感かなあ。あとは何かなあ。もう習慣化しています。
成田 それそれ。良い習慣。子育ても。親がしてあげられるのは、どれだけ良い習慣をつけてあげられるかですから。
山中 僕はいろいろ良い習慣をつけてもらったなあ。何? って言われても、すぐに出てこんけども。
成田 早寝早起き。他者への感謝。他人のせいにしない。自分で考える、とかもちゃう?
山中 そうやなあ。親につけてもらったその習慣を、自分の子どもたちにできたのかは、心配やなあ。
成田 大丈夫よ。山中君ひとりで子育てしてたんちゃうし。
山中 そうです、そうです。妻がやってくれました。それに母親や妻の両親やら、みんなが手を貸してくれました。図々しく「助けてくれ」って言えたから。
著者プロフィール
山中伸弥(やまなか しんや)さん:
1962年、大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。米国グラッドストーン研究所博士研究員、京都大学再生医科学研究所教授などを経て、2010年4月から京都大学iPS細胞研究所所長。2012年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。2020年4月から公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団の理事長を兼務。
成田奈緒子(なりた なおこ)さん:
1963年、仙台市生まれ。神戸大学医学部卒業、医学博士。米国セントルイスワシントン大学医学部、獨協医科大学、筑波大学基礎医学系を経て2005年より文教大学教育学部特別支援教育専修准教授、2009年より同教授。2014年より子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。主な著書に『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)、『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(共著/産業編集センター)。
『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』
著者:山中伸弥/成田奈緒子 講談社 990円(税込)
ノーベル賞科学者・山中伸弥教授が、神戸大学医学部時代の同級生であった小児脳科学者・成田奈緒子医師と子育てについて語り尽くす対談本。同級生ならではの打ち解けたムードのなか、徐々に本音を見せていく山中教授の親近感あふれる姿に魅了されるでしょう。エリート人生を歩んでいるかに見える二人の学生時代の意外なエピソードや、科学的根拠に裏打ちされた最新の子育て法に注目です。
構成/さくま健太
・第2回「「いいことはおかげさま、悪いことは身から出たサビ」ノーベル賞科学者・山中伸弥教授が語る子育て」>>
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