キレのある心の声が痛快な『ムチャブリ!わたしが社長になるなんて』

『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』(日本テレビ系・毎週水曜よる10時〜)

何でも安請け合いしてしまい陰で”社長の伝書鳩”と呼ばれていた秘書・雛子(高畑充希)が、ある日突然浅海社長(松田翔太)の思いつきで子会社の社長になり奮闘する物語。

表向きはいい顔をしている雛子が心の中で吐く本音が、キレがあっていいのです。
仕事もできてかっこいいけど、さまざまな思いつきで振り回されてきた雛子。1話冒頭、浅海社長を素敵に見せる演出の後にムチャブリの様子を映し、雛子が心の中で「私、こいつめっちゃ嫌いだわ~!」と叫ぶテンポ感が最高でした。

 

雛子には心の声のほか、一人になったときに考えていることを声に出してしまうくせがあります。子会社社長となった雛子の部下として本社から出向になった、3年目ながら仕事ができて優秀な大牙(志尊淳)。自分ではなく雛子の企画が通ったことに納得いかず、出向にも不満を持っています。真っ向から反抗的な態度のうえ、雛子の独り言をたまたま聞き「独り言、まじキモいっすね(笑)」と言ってくる大牙に「私、こいつも嫌いだわ~!」という心の声で終わった初回、最高でした。大牙とは居酒屋で「バーカ!」と言い合う大人げなさすぎる口ゲンカにも爆笑。

ほかにも心の声は続きます。ただでさえ急に社長になり無理難題がふりかかってくるうえ、人の話を真に受けがちな性格、そして実はズボラな雛子の毎日は、大変なんだけど、コントのよう。お店のオーナーが変わるのを拒否され、ヒートアップしたところを止めに入って代わりに殴られてしまったり、同窓会で「仕事も恋愛も両立するのが今の時代の考え方」と言われ、激務の中毎日デートを要求してくる男性に無理して付き合い入院してしまったり。浅海社長にチェーン展開の進捗を聞かれ「お任せください」と言いつつ心の中で「何もやってねぇ~」と叫んでいるのには笑ってしまいます。

雛子の心の声は「こういうことある~!」という共感ポイントが多くて、ちょっと胸がスッとします。何だかんだ体当たりで取り組んで、人の心を動かしてしまうところも応援したくなるポイント。心の声とは関係ありませんが、社長という役どころながらヴィヴィッドな色やアクセサリーを取り入れたカッチリしすぎないファッションがすごくかわいくて、高畑充希さんの小顔が際立つショートヘアも併せて、目が楽しい作品でもあります。

浅海社長のことも大牙のことも「嫌いだわ~!」から始まった本作ですが、浅海社長に「僕が君を選んだじゃない」と言われてから妙に意識してしまっているし、大牙とも一緒に仕事の困難を乗り越え、最初の険悪なムードからは脱していっています。キレのいい心の声が減ってしまいそうなのはちょっと残念ですが、今後雛子が言うところの「恋愛の温泉」が沸いていくのか、展開がますます気になります。

脚本は、『恋はつづくよどこまでも』にも参加した渡邉真子。3月に公開を控えた映画『余命10年』の脚本も岡田惠和とともに担当しており、そちらも楽しみです。