BTSが世界中の人々に伝えたメッセージとは

2021年9月、国連総会で演説中のBTSメンバー・RM 写真/アフロ

あれ? そういえばこの人たち、前にも国連で意外といい演説をしていたような……ふむふむ、SDGsね。どれ、ちゃんと見てみるかな! と記事をクリックし、国連のサイトに飛んで、登壇の様子をフルで視聴。そこではリーダーのRMをセンターにしてメンバー7人が壇上に並び、世界中の若者や子供から寄せられた声を紹介しながら、メッセージを読み上げていました。

 

既に語られて久しいですが、新自由主義のもとで格差が拡大し、BTSと同世代の韓国の若者や、日本も含めた多くの国の若者たちにとって、階層を移動することは非常に困難になっています。そして子どもたちは、気候危機の影響が深刻化する中で大人になるのです。加えて、今はパンデミックで人との接触が減り、学校生活もままならない日々が続いています。しかしそんな中でも新たな関係を構築し、自分にできることをやろうとしている若者たちがたくさんいます。

BTSの演説はそうした現実を踏まえ、世界中の若者たちと、喪失ばかりを語りがちな大人たちに向けて、困難の中にも希望があることを真摯に伝えるものでした。む、胸熱……

2018年の国連総会で演説した際のメンバーたち 写真/アフロ

スピーチはもちろん国連の意向で入念に練り上げられ、リハーサルを重ねて披露されたものでしょう。若い世代への訴求力を高めたい国連にとってはもちろんのこと、国内外の人々にアピールしたい韓国大統領にとっても、BTSが国連総会のステージに立つことは大きな利益となるはずです。

そうした構図は承知の上で、それでも彼らの語る様子からは、メッセージにパーソナルな実感が込められていることが窺えました。

「この人たちは、ただアイコンとしてここに立たされているのではなくて、グループとしても、一人称でも、言いたいことがある人たちなのだな。おそらくこれまでも、言葉や言葉以外のものを通じて、そういう主体的な語りをしてきたのだろう」と感じた瞬間、映像の解像度が爆上がりし、区別のつかなかったメンバーの顔が一人一人違って見えるようになりました。

そんな劇的覚醒状態で、彼らが国連の議場から青空の下へ駆け出して歌う「Permission to Dance」を聴いたら、何が起きるかお分かりでしょう。2度目に再生ボタンをクリックしたときには、私はもう温かなBTS沼の汀に、裸足の爪先を踏み入れていたのです。