BTSを知る旅に出ることにした理由

写真/アフロ

我が身に何が起きたのかを、私はまだわかっていません。だから、自分のようにBTSと彼らを支えるARMYというファンダム※とに触れて何かが不可逆的に変わってしまった人々が、どんな宇宙を生きているのかを知りたいと思いました。

※ファンダム:特定の対象を熱狂的に支えるファン集団と、彼らが形成する文化のこと。BTSのファンダムは「ARMY」と呼ばれている。

それはBTSと関わりなく生きている人も含めて、私たちが生きている時代への理解を深めることでもあります。まず手に取ったのは『BTSオン・ザ・ロード』(ホン・ソクキョン著)、『BTSとARMY わたしたちは連帯する』(イ・ジヘン著)、『BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか』(キム・ヨンデ著)。いずれも、BTSを愛する研究者が書いたものです。この3冊は、個人的にはBTSを知るための「三大経典」。読めば読むほどに、尋ねたいことが次々湧いてきます。

 

「BTSのある世界」。それは、強固な枠組みが綻びつつあることを感じられる世界。”全ては巨大な既得権益の力学で動いていて、生まれながらに力を持つ人しか自由や幸福を手にできない”という物語が、書き換えられようとしていることを実感できる世界です。

私もこれまで、大きな筋書きに必死にしがみつき、振り落とされては追いすがり、ときには生きることに絶望しながら、どうしても信じるに値するものを諦められないできました。それを手放さないでいて良かった。私は、BTSに間に合った。新しい宇宙の形成に立ち会うことができたのです。

わかっています。完全に語りがどうかしていますよね。しかし、それが「何かを好きになる」ということです。時にはリミッターを外すことも、人生には必要なのです。次回は恐ろしいことに、自分がこれまでどんな音楽を聞いてきたかを振り返ることにします。

熱烈な音楽ファンでも通人でもない70年代生まれの女が、何ら一貫性のない鑑賞遍歴を振り返り、なぜBTSの楽曲に心を持っていかれてしまうのかを無謀にも考察します。あなたもぜひ、ご一緒に。

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世界中の人々の胸を熱くするBTS
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文/小島慶子
担当編集/小澤サチエ