その市場規模は約2.5兆円と言われる、日本のアニメ業界。<ハケン覇権アニメ>=いわゆるアニメの頂点、No.1の称号を獲るための戦いは、毎クール50本以上の新作が生み出される状況においては、常に熱く、常に厳しい。

映画『ハケンアニメ!』はそんなアニメ業界に、公務員から飛び込んだ異色の経歴の持ち主である斎藤瞳(吉岡里帆)と、天才監督と呼ばれながらも長年のスランプで崖っぷちに立たされている王子千晴(中村倫也)が、同クール、同時間帯にテレビ放送されるライバル作品を手掛けることになり……というお仕事映画。<ハケンアニメ>の称号を手に入れるために繰り広げる、個性豊かな製作スタッフや声優たち、そして自分自身とのぶつかり合いが丁寧に描かれています。

【吉岡里帆×中村倫也】新人扱いから「認めてもらえた」と感じた瞬間は?_img0
 

たくさんの壁にぶつかりながらも自分の夢を切り開いていく新人監督・斎藤瞳を演じるのは吉岡里帆さん。対して、伝説の作品で名を馳せたものの、その後はヒット作に恵まれず鬱屈とした想いを抱える天才監督・王子千晴を中村倫也さんが演じています。

ゼロからイチで“世界”を生み出すアニメの現場で戦う、新人と天才のバトル。


斎藤瞳監督(吉岡里帆)の熱い想い、そして決してあきらめず何度でも立ち上がる姿。“天才”という評価を欲しいままにしながらも、その呼び名の重責に潰されそうになっている王子千晴監督(中村倫也)の葛藤。その中身に関してはなかなか知ることのできないアニメ業界が舞台ではありますが、ふたりの監督が抱える悩みは、社会人として仕事をするうえで、誰しもが感じる可能性がある悩みと言っても過言ではありません。

まずはおふたりに、作品のオファーを受けた際の印象について伺いました。

吉岡里帆さん(以下、吉岡):脚本が本当に面白くて、これは絶対にいい映画になる!という予感がありました。辻村深月先生の原作も最高で、アニメ業界で働く方の細かい描写に胸が熱くなったのを覚えています。

【吉岡里帆×中村倫也】新人扱いから「認めてもらえた」と感じた瞬間は?_img1

 

中村倫也さん(以下、中村):僕は最初、吉野(耕平)監督と『水曜日が消えた』という作品を撮っているときに、「中村さんにピッタリの役をオファーしているんです」と言われたのが『ハケンアニメ!』でした。それで原作を読んでみたら、すごくいい役というか、こんなにいろんな意味でカッコいい役が俺にピッタリなんて……! と思っていたんです。そしたら原作に「見た目も王子っぽくて」と書いてあり(笑)。それは違う。王子系ではない! と思ったというのが、最初の印象ですね(笑)。

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それぞれが演じられた斎藤瞳と王子千晴というキャラクターは、まさに真逆。それぞれ、どういった人物像をイメージしながら撮影に臨まれたのでしょうか。

 

吉岡:私が原作と脚本を読んで感じた斎藤瞳はすごく優秀な人で、基本的に自分のことはすべて自分でやる、人に頼るのが下手な人というのが、最初の印象でした。作品をつくるうえでの“芯の強さ”みたいなものをしっかり持っていて、そこが魅力的なのですが、周囲の人たちには少し伝わりにくい人なのかなというイメージです。

中村:王子千晴はワガママな子どものようでありながら、実は繊細なところもナイーブなところもあるし、周りをしっかり見ているところもある。そういうところをひっくるめてアニメの“監督”という立ち位置なので、意図的に傍若無人みたいなことをやっている、そういうところもあるかなと思い、そういうイメージで役に入りました。吉野監督に言われた「中村さんにピッタリの役」というのは、僕自身が持っている、わりとぶっきらぼうというか、ズバズバ言いたいことを言っちゃうみたいな、そういうところかなぁと思いましたね。あとは、王子のように、実は周りやみんなの人生を考えて、ひとつひとつの仕事に丁寧に取り組んでいる姿勢を評価していただけたのかと。ふふふ。

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“見た目も王子”な中村倫也さんと芯のある吉岡里帆さん
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