蜷川実花監督の最新作で、柴咲コウさんと神木隆之介の共演が話題となっている映画『ホリック xxxHOLiC』。原作はカリスマ的人気を誇る創作集団・CLAMPの大ヒットコミックで、2003年から週刊ヤングマガジンで連載が始まり、アニメ化や舞台化もされました。蜷川実花監督が10年前に原作を知って「映画化したい!」と熱望し、今年、ようやくそれが実現。蜷川実花監督を魅了した原作をひもといてみました。
“あやかし”が見えてしまい、苦悩する高校生
物語は、一人の高校生・四月一日君尋(わたぬき・きみひろ)の苦悩から始まります。彼には他の人には見えない、人の心の闇に寄り憑く“あやかし”が見えてしまう能力の持ち主で、少し外出しただけでもさまざまな“あやかし”がつきまとってしまいます。
ところが、ふとしたはずみで謎めいた洋館の塀に手をついてしまったところ、あれだけたくさんいた“あやかし”が姿を消し、なぜか自分の意志に反して体が動き、勝手に洋館の中に入ってしまいます。
わけがわからない四月一日を迎え入れたのは、マルとモロという2人の子どもたち。「それはアナタがここを訪れることがヒツゼンだったからよ」と、彼女たちが四月一日をとある部屋に案内すると、長い黒髪の女性がキセルをふかしていました。
女性に名前と生年月日を聞かれて、素直に答える四月一日。彼女は壱原侑子(いちはらゆうこ)と名乗ります(偽名だけど)。四月一日は部屋から出ようとしますが、襖がぴしゃりと閉まり、「この世に偶然なんてないわ あるのは必然だけ」とつぶやく侑子。彼女は四月一日に、「ポケットに入れているものを出しなさい」と言って、彼が持っていたアンティークの懐中時計を受け取ります。そして、四月一日の家庭環境や家事が得意といった特長をスラスラと話し出し、“あやかし”が見えることも言い当ててしまいます。侑子曰く、それは四月一日に流れる血のせいで、その血が“あやかし”を惹き寄せるというのです。
「与えられたモノには それに見合うだけの代償が必要」
侑子はさきほど聞いた名前と誕生日からそれくらい読み解けると話し、対価として懐中時計をもらうと言います。「与えられたモノには 須(すべか)らくそれに見合うだけの代償、代価が必要なのよ」。
「なんなんだココは――!」と叫ぶ四月一日に、侑子はこの場所が「ネガイがかなう、ミセ」と教えます。侑子にできることなら願いがかなう。ただし、それに見合った対価をいただく、と。侑子は四月一日の心を見透かしたように「視えなくなればいいと思ってるでしょう アヤカシが」と問いかけます。人生の中で起こる全てのことに意味があり、四月一日がこのミセに来て、侑子と出会ったことにも意味がある。
ただし、四月一日が“あやかし”を見えなくなるためには対価を払う必要があります。侑子は「このミセで働きなさい」と持ちかけます。こうして四月一日は侑子の元で半ば強引に働くことになるのです。
四月一日は掃除や食事作りなど、侑子たちにこき使われながら、侑子に願いを叶えてほしいという人や、人ならざる者たちとの不思議な出会い、奇妙な出来事に遭遇していくことになります。
漫画は一コマ一コマがアートのように繊細で美しく、物語の謎めいた世界観に、幻術のように誘(いざな)ってくれます。それでいてコミカルな要素もあり、時を忘れて読みふけってしまいます。そして、連載開始から約20年が経過した今でも、時空を超越した魅力を放っています。原作が好きな人は、蜷川実花監督が創り出す映像世界もぜひ堪能してほしいし、映画から入った人は、原作も読んでみて、比較しながら楽しんでみて!
『xxxHOLiC』
CLAMP 講談社
ダークファンタジー!
霊感体質の持ち主、四月一日君尋(ワタヌキキミヒロ)はある日、吸い寄せられるように一軒の家に……。そこは、壱原侑子(イチハラユウコ)という名の妖しい女性が主人をつとめる店で、どんな願いも、見合った対価をはらえばかなえるという。そこで働かざるを得なくなった君尋は、今日もコキ使われて……!?
「店よ。ねがいがかなう、ミセ。そのかわり対価をを頂くわ。それに見合った、ね」“あやかし”が視えてしまう四月一日(ワタヌキ)が必然的に訪れてしまった店とは!?
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