誰もが一度は図書館を利用したことがあるのではないでしょうか。現在、日本にある図書館(私立等含む)は3316施設(日本の図書館統計 2021集計より)。最近ではすっかり便利になり、インターネットで検索や予約ができ、準備ができたらメールで知らせてくれる図書館も珍しくありません。調べたいことがある時や、昔出版された本を探している時にも強い味方になってくれます。身近な存在であるはずの図書館ですが、実は意外と知られていないこともたくさんあります。ヤンマガWebで連載が始まり、現在はヤングマガジンに移籍して連載中の『税金で買った本』は、図書館が舞台のマンガ。図書館の役割や図書館員の業務、トラブルの数々を描いており、本好きには絶対刺さるし、普段、図書館を利用していない人はきっと行ってみたくなるお仕事マンガです。

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『税金で買った本』(1) (ヤンマガKCスペシャル)


図書館で貸し出しカードが作れないのはどうして?


とある公共図書館のカウンターにいるのは、高校生の石平くん。小学生ぶりに図書館を訪れ、貸し出しカードを作ろうとしたら、端末を操作する図書館員の女性・早瀬丸さんに、なぜか「裏の事務所でお話させていただけますか?」と言われます。見た目はいかにもな金髪ヤンキーですが、特に悪いことをしたわけでもなさそうです。

裏の事務所で早瀬丸さんが差し出したのは一枚の書類。10年前に小学生だった石平くんが『わくわく☆しりたい☆どうぶつのなぞ』という本を借りており、それが返却できていないので、貸し出し停止の措置が取られていると指摘されます。石平くんには全く記憶になく、引っ越しの時になくしてしまった様子。

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図書館の本を紛失した場合、「弁償」になると早瀬丸さんに告げられた石平くんは「ふざけんなこんな大昔の本 !! 時効だろ時効」と逆ギレ。そこで姿を現したのは、大柄でマッチョな図書館員・白井。彼は、今でこそイカつい見た目ですが、かつては貧弱文学青年でした。白井は図書館で働き始めた頃、利用者が若い女性に「今日発売の雑誌がなぜ読めないのか」とクレームをつけているところに遭遇します。女性が「準備中ですのでしばらくお待ちください」と伝えても利用者は聞く耳を持たなかったのに、年配の図書館員の男性が同じことを伝えると、その利用者はすごすごと引き下がっていきました。

 

そこで白井は、「動物は自分より強そうなものとは争わない」ということに気づき、愛する図書館の本と人々を守るために本で筋トレについて学び、トレーニングを重ね、今の強靭な肉体を手に入れていたのです。そんな彼が最も憎む利用者は「弁償をこばむ利用者」。図書館にある本はすべて「税金で買った本」であり、市民の財産だからこそ、紛失した場合はきちんと弁償してほしいと考えているのです。

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紛失した図書館の本、お金を払って弁償じゃだめ?


ヤンキーだけど素直なところがある石平くんは、白井の迫力に押されたこともあり、財布からお金を出そうとします。しかし、図書館では現金を受け取ることができず、利用者がその本を買ってきて現物で返さなくてはいけないというのです。子ども向けの本を買わなくてはならないという気恥ずかしさから、「もういいわ二度とこねえよ」と再びキレて図書館から帰ろうとする石平くん。

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そんな石平くんに、白井は「何か知りたいことがあったからまた図書館に来たのでは?」と問いかけます。そして、小学生の頃に借りた『わくわく☆しりたい☆どうぶつのなぞ』だって、きっと何かを知りたかったから借りたはずでは? と。

結局、石平くんはそのまま怒って帰ってしまい、「あれはもう来ないでしょうね」とつぶやく早瀬丸さん。今まで何度も、図書館から連絡してもなしのつぶてだったり、本の弁償を拒む人がいたりして、本も利用者も戻ってこない経験をしているので、ほとほと疲れ果ててしまっていたのです。石平くんもその一人になりそうと思われました。

図書館での仕事を終えた早瀬丸さんは、街の書店に立ち寄ろうとします。すると書店の前でじっと立ちすくむ石平くんと、その様子をこっそりと見守る白井に遭遇します。

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20分も店の前で逡巡していた石平くんですが、やっと店内に入ります。売場に向かう時、どうして小学校の頃にあの本を借りようとしたかを思い出そうとします。父と動物園に行った時、ワニがずっと口を開けたままなのが気になった石平少年は、父に「なんで」と聞きました。すると父は、「自分で調べてごらん その方が勉強になるから」といい、今度図書館に連れていく、と言ってくれたのでした。

その後、石平くんの両親は離婚し、引っ越しのゴタゴタもあってワニのことも、借りていた本のことも全部忘れていたのです。すっかり忘れていたのだからどうでもいいと思ったものの、頭の中を占めるのは、ワニの口のこと。気になって仕方がなくなり、売場で『わくわく☆しりたい☆どうぶつのなぞ』を手にとって確かめます(なぜワニが口をあけているかは、第1話試し読みで確認してみよう!)。

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石平くんはその本を購入して図書館に「弁償」し、無事、貸し出しカードを作ることができたのでした。こうして石平くんは、顔見知りになった早瀬丸さんや白井さんとのやりとりを通して図書館自体に興味を持つようになり、図書館でアルバイトを始めることになるのです。

図書館はすべての人に開かれた施設で、本が好きな人、何かを知りたい人など、さまざまな目的を持った人が利用しています。だからこそ、「弁償」のようにさまざまなルールがあります。また、図書館員には、利用者が探している本を迅速に見つけたり、汚れや破れがある本を修理したり、どの本を購入するかを決めたりといった数え切れないほどの業務があり、それらを円滑に行っているからこそ、利用者は施設を快適に利用することができます。

本作では、石平くんの目線からさまざまなエピソードを通して、図書館や図書館員の役割や困りごとなどを垣間見ることができます。そのどれもが「へー」と声を出したくなることばかりで、まさに「知る」よろこびを味わうことができます。よく公共施設やそこで働く人のことを「税金ドロボウ」だの「税金払ってるんだぞ」と偉そうに責め立てる人がいますが、「税金で買った本」だからこそ、納税している私たちもその本や施設、そこで働く人たちを尊重し、大切に扱うべきなんだな、ということに改めて気づかされます。「税金で買った本」というタイトル、秀逸すぎです。

 

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『税金で買った本』
原作:ずいの 作画:系山冏 講談社

小学生ぶりに図書館を訪れたヤンキー石平くん。10年前に借りた本を失くしていたことをきっかけに、あれよあれよとアルバイトすることに! 借りた本を破ってしまった時は? 難しい漢字の読み方を調べたい時は? ルールに厳しくも図書を愛してやまない仲間と贈る、読むと図書館に行きたくなる図書館お仕事漫画、誕生です!

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