簡単な記録を残すことが、自己肯定感アップにつながる


──自発的に情報を断たないと、自分軸を保つことは難しいのですね。

情報を断つことと異なるアプローチとしては、ひとりの時間を大事にしてみるのも良いと思います。自分の心とゆっくり落ち着いて向き合うと、自分が本当に望んでいること、もしくは自分に必要のないことがはっきりしてくるでしょう。それが自分軸を持つことにつながると思います。本書にも書かせていただきましたが、自分と向き合う方法として、私からは「書く」ことをお勧めします。

──「書く」とは日記のようなものでしょうか? 苦手な人もいそうですね。

普段から書く習慣がない人であれば、何にいくら使ったとか、そういう簡単な記録を残すだけでもいいと思います。たとえば、「コーヒー=720円」と記すだけでも十分です。「720円も出す価値があったのか?」とか、「あの話をして2時間過ごしたんだ」とか。記録だけでも自分と向き合うことはできるでしょう。

──自己肯定感を高める手段としても「書く」ことに注目が集まっていますね。

そうですね。私も自己肯定感を高めるためのワークブック的なものを目にしたことがありますが、それを面倒だと思う人は、先ほどのように使った金額や行った場所、会った人などを簡単に書き留めておくだけでもいいと思います。自分が無理なく継続できる方法で試してほしいですね。ワークブックを買っても三日坊主になってしまうと、「やっぱり私はダメな人間だった」と、かえって自己肯定感を下げてしまうかもしれませんから。

岸本さんが「書く」ときに使用するノートとペン


恐怖や不安は取り除けないけど、サイズダウンはできる


──手軽に自分と向き合えることはわかりましたが、私などは自分と向き合う行為そのものになぜか恐怖を感じます。もしかしたら、ダメな自分、面倒くさい自分を突きつけられて、無駄に傷つくのではないかと懸念しているのかもしれません。

恐怖というのは正体がわからないときほど大きく見えますよね。恐怖や漠たる不安って取り除くことはできないけれど、サイズダウンはできると思っています。サイズダウンというのは、まずは正体がわかる部分から対処することですね。一気に全体を捉えようとするから、正体がわからなくなっているのだと思います。部分的に対処していけば、得体のしれない恐怖や不安に押しつぶされることはないと思います。

 

──岸本さんは昔から冷静に恐怖や不安と向き合えたのですか?

冷静かどうかはわかりませんが、自分が怖がっているものに対しては人一倍敏感だったと思います。こう言うと優等生っぽく聞こえるんですが、私は昔から夜遊びをしなかったんですね。気の合った人と遊んで楽しくなったとしても、家に帰って昨日と同じ状況があるのはすごく怖いなと感じていて。夜遊びに出かけるより、家にいて、このままではいけないと思う要素を取り除いていくほうが結果的には良い、といったことを考えていました。