「胸キュン」シーンにはアップデートは不要?


筆者は、恋愛や結婚は選択科目であって必修科目ではない、と思っています。「恋愛しないと人生楽しくない」という言説は、「あんこのうまさを知らないなんて人生損してる」と言われるくらい、「ちょっと何言ってるかわからないですね」なものなのです。

さらに「恋マジ」では、レストランの店員である柊磨が、出会って間もない純にお店でキスしようとしたり、自分の部屋に誘ったり。それ、今の時代完全アウト……というシーンもいくつかあります。例えば、恋人ではない関係で許可なく強引にキスしたり、押し倒したり、体を触ったり。

 

そうした演出は、少し前なら胸キュンシーンとして問題なく消費されてきました。しかし昨今では、リアルにやったら完全にセクハラですし、仮に好きでもない人からされたら恐怖でしかない、なんて声も聞かれます。そういった感覚が全くアップデートされていない感じが、ドラマの随所から感じ取れるのです。

 


「恋する人・しない人」は本当に対立する存在か


そして、恋愛する側/しない側の対比の仕方にもいびつさを感じました。夫以外の男性に惹かれる響子が、「恋の入り口でウダウダしている純に私の気持ちなんてわかりっこない!」と切り捨てるシーンがあったのです。

恋の悩みを、恋したことがない人がわからないのは仕方ないかもしれませんが、「あなたにはわからない!」なんて言ってしまうのはなかなか残酷。恋愛初心者でまだ踏ん切りがつかない純に「ウダウダしてる」なんてキレるのも、ちょっと謎です。

さらに純は純で、恋する側の人に「恋なんて人生の邪魔」と吐き捨てるように言ったり、はじめはちょっと恋を馬鹿にしているようなところも。

筆者は恋しない側の人ですが、恋を素晴らしいという人の意見を否定しようとは思いません。あくまで他者に押し付けることが問題なのであって、それぞれの生き方を否定するのは違うと思うからです。恋しない人は恋愛をうがった目で見ている、恋する人と恋しない人は対立しがち、みたいな先入観も、やっかいだな、と思うことのひとつです。