三浦義村役の山本耕史(写真は2016年当時)。写真:Motoo Naka/アフロ

まず「中グループトップ」は山本耕史で固定。義村は義時の盟友であり、死者の相次ぐ本作で最後まで生き残る重要キャラクター。また、山本耕史は『新選組!』で土方歳三を演じるなど三谷作品への貢献度も高め。そうした諸々の点を鑑みて、山本耕史が「中グループトップ」を獲得したと見ていいでしょう。さらに、この「中グループ」の最後に表示されるのが、梶原景時役の中村獅童です。つまり「中グループトメ」と言えるポジション。この2人に関しては、大きな配慮がなされていることがクレジットからも見受けられます。

 

豪華キャストだから生まれるクレジットの悲喜こもごも


そして、大物揃いの大河ドラマでいちばんの見どころとなるのが、「トメグループ」。普通のドラマならいちばん最後にクレジットされて然るべき俳優がバンバン登場します。その中で「トメ」を飾るのは、後白河法皇役の西田敏行。大河や朝ドラといった放送期間が長く、出演者の途中退場、途中参加が多いドラマの場合、出演回では必ず「トメ」を張る俳優のことを「大トメ」と呼びます。つまり、『鎌倉殿の13人』では西田敏行が「大トメ」です。

後白河法皇役の西田敏行(写真は2015年当時)。写真:長田洋平/アフロ

ですが、これだけビッグネームが揃うと、他にも特別扱いを設けないと、いろいろ角が立つというもの。そこで大河ドラマでは「トメグループトップ」という民放の連ドラではあまり見ないポジションも設けています。これは何かと言うと、「トメグループ」に入ったときに必ず最初に表示されるキャストのこと。今作では、平清盛役の松平健が「トメグループトップ」です。松平健に関しては、制作側もある程度配慮していることがわかります。

さらに難しいのが、同格の俳優が並んだときに、どう序列をつけるかです。できれば、どちらが上でどちらが下かなど明確にしたくないのが制作側の本音。今作で言うなら、宮沢りえと鈴木京香の2人がそれに該当します。年齢が近く、どちらも甲乙つけがたい名女優。ですので、なるべく丸くおさめたいという気持ちがあるのでしょう。よく見てみると、鈴木京香が表示されたあとには、必ず短く空白が設定されています。

りく役の宮沢りえ(写真は2016年当時)。写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

一般的に「トメグループ」は後ろに表示されるほど序列が高いので、通常であれば鈴木京香のあとに表示される宮沢りえの方が重要度は上。しかし、鈴木京香のあとに一度空白を入れることで、ここでグループはひと区切りしているという名目をつけているのです。これによって、両者の間で直接的な序列がつくことを回避。まさに日本人らしい行間を読むテクニックを駆使しまくっています。