この空白は、別のところでも絶妙な味を効かせています。それが、源頼朝役の大泉洋。本来、物語における重要度で言えば、後白河法皇より源頼朝の方が上です。が、大泉洋にとって西田敏行は大先輩。そこで「大トメ」は西田敏行がとっているわけですが、さりとて主人公・義時に次ぐ重要人物である頼朝をただの「トメ前」にするのは忍びない。ということで、宮沢りえと大泉洋の間にも空白を入れることで、大泉洋を立てているのです。

源頼朝役の大泉洋(写真は2018年)。写真:Charles Sykes/Invision/AP/アフロ

事実、後白河法皇の登場しない「決戦前夜」や「亀の前事件」の回では大泉洋がトメを張るので、わざわざ立てる必要がないと判断したのでしょう。宮沢りえと大泉洋の間のブランクは消えています。さらっと流し見しているクレジットですが、裏側ではこんな涙ぐましい気配りが凝縮されているのです。

 

この面白さがわかってくると、今度は新キャストが登場するたびに、この俳優はどこにクレジットされるのだろうと予想する楽しみがついてきます。『鎌倉殿の13人』で言えば、注目は北条泰時役の坂口健太郎。おそらくドラマのラストを飾るであろう「御成敗式目」を制定するのが、北条泰時。後半戦における義時に次ぐ重要人物です。では、泰時はどこにクレジットされるのか。

北条泰時役の坂口健太郎(写真は2018年当時)。写真:YONHAP NEWS/アフロ

ポイントは、小池栄子の前か後かです。新垣結衣、菅田将暉と重要キャストが次々と退場した今、小栗旬の次に坂口健太郎の名前が出てもおかしくはありません。一方、政子も「尼将軍」として幕政の実権を握る重要人物。後半は小池栄子が二番手という展開も十分に考えられます。

北条政子役の小池栄子(写真は2021年当時)。写真:西村尚己/アフロ

泰時が先か、政子が先か。邪道とはわかりつつ、そんな並びにニマニマするのもドラマオタクの特権。クレジットが表示されている間はトイレタイムなんてもったいないことを言わず、その序列に注目してみると、また新しい楽しみが増えるかもしれません。

<番組紹介>
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

©NHK

<地上デジタル>
毎週日曜、NHK総合にて午後8時~
※再放送は毎週土曜、午後1時5分〜
<BSプレミアム・BS4K>
毎週日曜、午後6時~
※放送予定は変更される場合があります。最新情報は番組表をご確認ください。

<見逃し配信>
最新話は、PCやスマホで観られる「NHKプラス」で放送後1週間視聴可能(視聴には要利用登録)。
第1話からの過去の放送回は、有料配信サービス「NHKオンデマンド」 で視聴可能です。


文/横川良明
構成/山崎 恵

 

 

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