「あの時、こうしとけばよかった」「あんなこと言わなきゃよかった」などと、自分の行動を思い返して気持ちを引きずってしまうことはありませんか? それがエスカレートして夜寝つけなくなってしまったり、普段の行動が必要以上に慎重になり、身動きが取れなくなってしまったりすると、健康状態や日常生活にも影響が出てしまいます。また、生まれつきとても敏感な人(HSP=
Highly Sensitive Person)にも注目が集まっており、繊細すぎるために生きづらさを感じてしまうと言われています。自分のことを省みるのは大切ですが、必要以上に気にしすぎてしまうと、心の負担は大きくなるばかり。どうしたらこんな状況から脱することができるのか? オトナ女子向けデジタルコミック誌「comic tint」連載中の『君としたいから出られない部屋』にそのヒントの一つが隠されているかもしれません。


自分の言動を気にしすぎるあまり、睡眠不足に悩む女子がひとり


「君としたいから出られない部屋」の主人公・嶺村芽衣子(みねむら・めいこ)は、社会人の26歳。毎週土曜午後になると、近所の吉神医院に通うのがルーティンです。小さい頃の同級生の母親が院長を務める病院で、日頃の悩みを聞いてもらうのが、芽衣子にとって安らぎのひとときになっています。実は芽衣子は自分の言動を気にしすぎるあまり、夜は寝不足になるほど。週末にここで話を聞いてもらって気を緩めることができ、やっと眠りにつけるという状況なのです。

 

ある土曜日もいつものように医院を訪れる芽衣子。院長先生に急ぎの用が入ってしまい、先に相談室に入ることに。ところが、ドアを開けるとメガネに白衣姿の男性医師の姿が。見知らぬ男性を前に動揺し、そのままドアを閉めて部屋から出ようとしたところ、「行かないでくれ 部屋が大変なんだ」と声をかけられます。「大丈夫ですか…?」と部屋に入ったところでドアの故障に気づき、ふたりとも部屋から出られなくなってしまいました。

頼みの綱は部屋の外にいる院長先生ですが、用事があったためつかまりません。芽衣子は見知らぬ男性とふたりきりで閉じ込められてしまったのですが、男性医師曰く、「まぁそのうち母が来るから大丈夫だろう」と。そこでその男性が院長先生の息子で、芽衣子の同級生の兄・至(いたる)であることに気づきます。

 



見知らぬ医師は、同級生の兄だった! 二人で部屋に閉じ込められて……


至は東京で医師になっていて、最近、将来的に母の医院を継ぐために戻ってきていたのです。至も芽衣子のことを覚えていました。芽衣子は至から病院に来た理由を訊ねられ、自分が気にしすぎなことや、ここで話すことが安眠につながっていることを伝えます。とはいえ、小さい頃に面識があっただけでは会話が続くわけもなく……。相談室は勝手知ったる芽衣子がお茶を入れようとすると、棚の奥から謎の箱を見つけます。箱の上に丸い穴が空いていて、手を入れてクジなどを引くようなパーティーグッズでした。

 

吉神家では、箱の中にいろんなお題を書いた紙を入れ、引いた人がその内容を実践するというイベントを年末などによくやっていたというのです。至が試しに引いてみたところ、出てきたお題は「相手のいいところ3つあげる」。芽衣子は面識がある程度の至が、自分のいいところを3つも挙げるのは難しいだろうし、気まずくなるかもと空気を読んで「もう一回引きますか!!」と切り出そうとします。

 

でも至は、短い時間しか一緒にいない芽衣子のことをきちんと見ていました。自分のことを覚えていてくれたから「記憶力がいい」、芽衣子が心配していろいろ話してくれたから「気遣いができる」など、3つのいいところを挙げてくれたのです(あともう1つは試し読みでぜひ確認を!)。

自分の言動を気にしすぎて、つい自分を責めがちな芽衣子にとって、至が3つもいいところを挙げてくれたことに感極まって泣いてしまいました(そりゃうれしいよね)。そして、泣いたことで心が緩んだのか、急に眠たくなってきました。医師の至曰く、芽衣子は常に気にしすぎていて緊張状態で、自律神経のうちの交感神経の方が優位な状態にあると思われるのだけど、泣いたことでリラックス効果のある副交感神経が働いたのではないか、とのこと。部屋の片隅にあるソファベッドで寝させてもらうことに。ところが、芽衣子が寝ている間に至もつい寝てしまい、ソファベッドの上でお互いの顔が近づいて……。


毎週土曜午後は、お互いの心の悩みに向き合うことに


ようやく至の母である院長先生が戻り、部屋のドアを開けてくれたので、ふたりは無事部屋から出ることができました。慢性寝不足の芽衣子が部屋で寝てしまったことを知った院長先生は、土曜午後の芽衣子のカウンセリングを至に任せることを決めます。はじめは動揺した芽衣子ですが、至との会話を通して緊張がほぐれたのは事実で、良い変化がもたらされるのではないかという予感を信じて診察をお願いすることにします。

 

実は至もまた、長年勉強ばかりしてきたばかりにコミュニケーション能力が著しく低いことを自覚しており、仕事中は一切ミスをしないよう気を張っているものの、かえってそれが患者に威圧感を与えてしまうという悩みを抱えていました。一方で、油断をするとドジを連発してしまうというのです。でも、閉じ込められた部屋という環境で、相手も昔なじみという気安さなら至もまた、自分の内面と向き合えるのではないかと考えます。二人は医師と患者でありながら、お互いの長年の心の問題に向き合う同志という、不思議な関係が始まることになるのでした。

本作は「君としたいから出られない部屋」と、作品名もどこか不思議。単に物理的に部屋から出られないという意味ではなく、長年、自分の殻に閉じこもって出られないでいるとか、お互いの信頼関係によって飛び出す勇気が持てるとか、さまざまな意味が込められているように感じられます。あえて「○○をクリアしないと、部屋から出られない」という制約をつけることで、一歩踏み出そうとする二人を見ていると、頑張れ! と応援したい気持ちになると同時に、自分も勇気をもらえそう。もちろん、医師と患者、昔なじみという関係性が少しずつ恋愛へと変化していく過程も、見どころとお楽しみのひとつ。不器用医師と気にしすぎ女子の行く末が気になります!

 


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『君としたいから出られない部屋』
アメヤゆうり 講談社

不器用医師×気にしすぎ女子、ヒミツのカウンセリング始めます!不眠の相談のため、かかりつけクリニックに通うOLの芽衣子は、ある日知らない医師と部屋に閉じ込められてしまう。相手はよく見たら、幼馴染の至くん!? しかも閉じ込められている間にキスしちゃって――!? お互いの悩みを解決するため、土曜午後の診察室は、お題をクリアするまで出られない部屋に変わる!