過去に付き合っていた人から言われた言葉を、何年も引きずっている――、なんてことはありませんか? どういう意図で言ったんだろう? もう別れたのにまだ忘れられない、など、いろんな感情がぐるぐるして、ますます抜け出しにくくなるものです。女性マンガアプリ「Palcy」で連載中の『カラダ、重ねて、重なって』は、そんな過去のトラウマを抱えつつも、一歩前に踏み出そうとする大人のピュアなラブストーリー。共感必至で、各電子書店でもランキング上位に入っている作品です。


過去のトラウマから、もう交際しないと決めたアラサー女性


『カラダ、重ねて、重なって』の主人公・岡本みすずが、未だに忘れられない元カレからの一言は、

「おまえのセックス ホントつまんねぇ」

 

そんなこと言われたら、背後から蹴りを喰らわしたくなるところですが、みすずは呆然としてしまいます。今までのセックスでは最後までしていたのに、ずっとそう思っていたってこと? そして、翌日別れを告げられてしまったのです。

 

あれから5年、29歳になったみすずはクラウドファンディングを運営する会社でWebデザイナーとして働いています。仕事は充実しているものの、今後男性と付き合うことはないし、ましてやセックスとは無縁の人生だと思っています。職場では無表情で、人を寄せ付けないようにしているのも、実は過去のトラウマから来るもののようです。

そんな中、2年前にみすずの会社に転職してきた営業の御影匠真だけは、近寄りがたいオーラを発するみすずにも笑顔で、親しげに話しかけてくれます。匠真は穏やかで優しく、仕事もできることから、社内では“菩薩”と言われているほど。

 

ある日のこと、クライアントとの接待飲みにみすずが参加することになりました。相手が呑ませたがりだったため、酒をどれだけ飲んでも平気なみすずが呼び出されたのですが、そのことを知らなかった匠真が、無理やり飲まされていると勘違いして、本当は下戸なのに代わりに飲んでくれたのです。接待飲み終了後、実はみすずは酒が強いことを伝え、「大丈夫?」と言おうとすると、匠真は、「あんなふうに扱われて 岡本さんは悔しくないんですか?」と吐きそうになりながら怒っていたのです。その時から、みすずの匠真への見方が変わり、彼を意識するようになりました。でも、みすずには過去のことがあるため、踏み出す勇気がありません。


気になっていた男性と実は両思いで、お互い悩みを抱えていて……


いつものようにみすずが仕事をしていると、夕方に大量の修正作業が発生します。他の社員は子供のお迎えや打ち合わせなどがあり、結局みすず一人が残業するハメに。帰れる気がしないと思っていたところ、匠真が「2人でやった方が早いです」と手伝ってくれることに。なんとか修正作業を終え、会社を出た途端に土砂降りの雨に見舞われてしまう二人。駅は封鎖され、タクシー乗り場は大行列で、周辺のホテルも満室。打つ手なしと思っていたところ、匠真から「うち来ますか?」と提案され、その流れで匠真はみすずに「俺… 岡本さんが好きです」とストレートに思いを伝えます。

 

みすずもまた、匠真のことが気になっていました。でも、頭をよぎるのは、元カレとのこと。でも、相手は元カレではなくて、匠真という別の人間です。仕事などを通じて彼の誠実さや優しさは分かっていました。なので、みすずは匠真の思いを受け入れ、自分なりにゆっくりと一歩を踏み出そうと心に決めます。

匠真の家に着いた二人は、ゆっくりどころか勢いでお互いを求め合うことに。みすずは匠真に優しくリードされ、「もしかしたら」と前向きな気持ちになります。ところが、「今日は… もう寝ましょう」と匠真は途中で行為をやめてしまったのです。やっぱり自分のセックスがつまらなかったのかと、思わずボロボロと涙をこぼして辛い気持ちを吐露してしまうみすず。そんなみすずに対して、匠真も、実は緊張すると勃たないということを告白します。

 

お互い、セックスで悩みを抱えていたことが明らかになるのですが、匠真はみすずと違っているところがありました。匠真は、どうせ今回も勃たなくて失敗するという不安を覚えつつも、みすずのことが好きで魅力的だから、どうしても諦めきれなかったからみすずを求めてしまったと言い、それでも「チャンスをくれませんか」と誠実に申し出たのです。そこで初めて、みすずも過去の経験から自分のことで頭がいっぱいで、自分から頑張ることをしてこなかったことに気づかされたのです。

自分が抱えている悩みは、同時に弱みでもあるので、なかなか素直に人に伝えることはできないものです。ましてや好きな人となると、「嫌がられるのでは」「面倒臭がられるのでは」「幻滅させてしまうのでは」「格好悪いところを見せたくない」などと考えてしまいがち。さらには性のことになると、相手に伝えるハードルはぐんと上がります。でも、この作品の二人は、“菩薩” 匠真の人柄もあって、少しずつできることから挑戦してみて、時には失敗をしつつも、着実に距離を縮めていきます。その過程が丁寧に描かれていて、ついつい引き込まれてしまいます。

自分の嫌な部分や弱い部分、恥ずかしい部分に向き合い、それを相手にも伝えるのは容易なことではありません。でも、そういう部分をおざなりにすることで、自分の感情に蓋をしていつまでも引きずってしまったり、好きなのにお互いに深く踏み込むことができず、いつしかすれ違ってしまったりするのかもしれません。この物語は、不器用で純粋な大人カップルのラブストーリーではありますが、いろんなことに気づかせてくれます。5/13(金)には4巻も発売されたばかり。カラダだけでなく、心も重なり合っていく二人を応援したくなります。
 

 

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『カラダ、重ねて、重なって』
iko  講談社

「おまえのセックス、ホントつまんねえ」5年前そう彼氏に言われ振られた、みすず(29)。同僚・御影に惹かれる気持ちはあるものの「付き合う=セックスありき」と思うと、一歩を踏み出せずにいた。そんな時御影に告白をされ、2人は恋人同士に。体を重ねる流れになったが、御影もセックスに悩みを抱えていたことが分かり――!?  恋人同士、心とカラダを重ねながら「本当に満たし合うセックス」を探す、大人のリアル・ラブ。