熱中症の主な症状


優子さんが医師に言われたように、高齢者の熱中症は重症化すると命に関わることになりかねません。高齢者は若い人に比べて体内の水の量が少なく、喉の渇きを感じる機能も低下しているので、水分補給が遅れがち。高血圧や糖尿病の方は、利尿薬の服用で脱水状態になりやすいので特に注意が必要です。

熱中症は大きく3つの段階に分類され、以下のような症状が現れます。

熱中症の発生場所は4割が住居内!?この夏常備しておきたい手作り経口補水液_img1
 


熱中症になったかも! そんな時の応急手当


では周りの人が熱中症らしき症状を訴えた時、どのように対応すれば良いのでしょうか。日本救急医学会が発表した「熱中症診療ガイドライン」には、以下のように書かれています。

熱中症の発生場所は4割が住居内!?この夏常備しておきたい手作り経口補水液_img2
 


熱中症の予防・治療には何を飲むのがベスト?


熱中症予防のポイントは、塩分と水分の補給です。熱中症では、水分とともにNaなどの電解質が失われるため、水分補給に加えて適切な電解質の補給も重要とされています。そこで予防と治療においては、塩分と水分の両者を適切に含んだもの(0.1〜0.2%の食塩水)を飲むことが推奨されており、現実的には市販の経口補水液が望ましいという報告もあります。

優子さんのお母様が普段からよく飲んでいるという緑茶は塩分が少ないため、自分では水分補給をしているつもりでも、結果的に電解質が補給されていない場合もあり、熱中症の予防・治療としては向いていないと考えられます。また、カリウムを多く含む緑茶は、腎機能が落ちている高齢者には控えた方が良い場合があります。

水分補給が目的であれば、麦茶にはカテキンやカフェインは入っておらず、亜鉛・リン・カルシウムなどのミネラル類、食物繊維やタンパク質、リノール酸なども含まれるのでとてもおススメです。夏の水分補給はスポーツドリンクをと思う方も多いかもしれませんが、こちらも糖分が多く含まれているため、飲みすぎると肥満や高血圧などリスクが上がってしまいます。その意味でも、経口補水液がおススメです。
 

 

冷蔵庫に常備しておきたい「経口補水液」の作り方


風邪やインフルエンザなどによる急な発熱、熱中症による多量の発汗や脱水症状に便利な経口補水液。大塚製薬からオーエスワン(OS-1)の商品名で販売されていますが、沸騰した水を冷まし、砂糖、塩、レモン汁を加えてすぐに手作りすることもできます。用意するのは、水500ml、砂糖大さじ2杯、塩ひとつまみ、レモン汁だけ。わざわざ買いに行くのも……という方は、麦茶を作る感覚で冷蔵庫に常備しておくと良いかもしれません。

熱中症の発生場所は4割が住居内!?この夏常備しておきたい手作り経口補水液_img4
 

なお、屋内で発生する熱中症の大半がエアコンを付けていなかったことによるものですが、生活保護の世帯に対しては、厚生労働省が54000円のエアコン購入費の支給を行っています(2018年4月以降に新たに生活保護を利用し、熱中症予防の必要がある高齢者などがいる世帯に限る)。月々のエアコン代のことを考えて極力付けたくないという方もいるかもしれませんが、熱中症によって数十万円の医療費がかかってしまったら元も子もありません。暑さがピークを越えるまでは、命を守る出費を惜しまないことも必要です。
 

 
 


熱中症の症状と応急手当、経口補水液の作り方についてはこちら
▼右にスワイプしてください▼


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

熱中症の発生場所は4割が住居内!?この夏常備しておきたい手作り経口補水液_img7
 


前回記事「「どうすれば親を傷つけずに認知症検査に連れていけるか...」性格タイプ別・早期受診の勧め方」>>

 
  • 1
  • 2