米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。

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『エルヴィス』 (公開中)
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『ムーラン・ルージュ』やNetflixの『ゲットダウン』などバズ・ラーマンが手がけた作品が大好きなので、最新作の『エルヴィス』も楽しみにしていました。
冒頭からスクリーンには「これぞバズ!」という華やかできらびやかな映像が広がり、このままエンディングまで進んでいくのかなと思ったんです。
でもこれまでの作品とはちょっと違っていて、最後には切ない余韻が残る伝記映画になっていました。

エルヴィスというと、派手なステージ衣装や濃いルックスのイメージが強かったのですが、この映画で描かれているキャラクターは優しくてどこか繊細。でもやっぱりステージのシーンは強烈でした。
だって彼が腰を振って歌うと、女の子たちがキャーッ! と叫んで倒れていくんですよ。当時はまだ白人の歌手がここまでセクシーに歌って踊ることはなかったんでしょうね。

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エルヴィスを演じたオースティン・バトラーのパフォーマンスも、とてもエネルギッシュでかっこよかった! 
彼の歌声とエルヴィス本人の歌声を重ねた場面と、エルヴィス本人の歌声のみが使われている場面があるそうですが、その境界線がわからないほど自然で、どのパフォーマンスにも引き込まれました。
この映画で初めて知ったオースティン・バトラーの存在感もさることながら、エルヴィスを追い込んだ強欲なマネージャーのパーカー大佐を演じたトム・ハンクスも素晴らしかった。いい人ばかりではなく、こういう意地悪な役もできるんだなと驚きながら、名優のお芝居を堪能しました。

 

スーパースター、エルヴィス・プレスリーの人生を追いかける物語のなかで、バズ・ラーマンは光だけではなく影の部分も描いています。
足を失った鳥が休憩するときは、羽を広げたまま風に任せて飛び続けるしかないーー。
ショービジネスの世界に一度足を踏み入れた人の悲しさが伝わってきて、心が痛むシーンもあります。

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彼の人生を見ながら脳裏に浮かんだのは、マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストン、フレディ・マーキュリーなど、あふれる才能を持ちながら若くしてこの世を去ったスターたち。
そしてダイアナ妃やマウリツィオ・グッチの名前も思い浮かびました。

エンターテイメントの世界で生きた人だけではなく、トップに立つ人は孤独を背負う宿命なのかもしれません。エルヴィスが死ぬまでずっと動き続けて命を燃やし続けた人であることを、バズ・ラーマンはよく動く激しいカメラワークでも伝えているような気がしました。
エルヴィスの人生と監督の表現がうまく重なり合っている、ぜひスクリーンで観てほしい作品です。

 

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<映画紹介>
『エルヴィス』

「世界で最も売れたソロアーティスト(ギネス認定)」エルヴィス・プレスリー。だが、彼が頂点に立つまでには、知られざる険しい道のりがあった……。独特でセクシーすぎるダンスと、真新しい音楽“ロック”を熱唱するエルヴィスに、若者たちは大興奮。その人気は瞬く間に全米に広がり、エルヴィスは一躍スターに。しかし一方で、保守的な大人たちは彼の音楽を受け入れなかった。ブラックカルチャーをいち早く取り入れたパフォーマンスで世間の非難を浴び……。42歳という若さで死んだスーパースターの波乱万丈な生き様を、数々の名曲と圧倒的なライブパフォーマンスで描く。
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)

 

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