港区タワマン住人図鑑
多香子(42):夫の店の経営状況が悪化、娘の絵里花の中学受験費用や住宅ローンがのしかかっている。
明菜(37):「美貌でお金持ちを捕まえてうまくやった」と言われ続けモヤモヤ。娘の亜美を名門中学に合格させようと湯水のごとく課金中
成美(45):シングルマザーの経営者。幼少期の苦労からハングリー精神の塊で、娘のマミをブランド校に入れると密かに誓っている。
港区タワーマンション怪談【多香子の決意】
「ママ、ちょっと話があるの」
夕飯を終え、普段ならばすぐに部屋にこもって勉強をする絵里花が、なかなか多香子の前から立ち去らないと思っていたら、いつになく真面目な調子で切り出した。
11月、タワーマンションの上層階からは、木枯らしで洗われた空気の向こうに、煌めく夜景と東京タワーがよく見える。
「もちろんよ、どうした? もしかして、マミちゃんのこと? それだったらもう心配しなくて大丈夫、マミちゃん、お母さんとしっかり話して、もうこんなことはしないって元気な心を取り戻したみたいだから」
「違うの、そのことは心配してないよ。マミとも話したし。……そうじゃなくてね、志望校のことで相談があるの」
「え? 志望校?」
多香子は目を丸くする。絵里花はこれまで、志望校に関して悩むことはほとんどなかった。親友たちと一緒に、都内で3本の指にはいる憧れの名門女子校を目指して、ひたすら頑張ってきた。合格率は良くて五分五分のまま突入することになりそうだが、多香子はそれを応援すると決めていた。
「うん……あのね」
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