努力して結果を出した経験がその人を強くすると思う


ーー宇垣さんの文章には、同時代を生きる女性たちへの優しいまなざしを感じたり、自分を遠くから見る俯瞰的な視点を感じたりすることがあります。『風を食べる2』の中の「頭の中に6人の女性がいる」というお話などは、自分自身のメンタルケアにもつながる考え方なのではないでしょうか。

宇垣:そんなことも書きましたね(笑)。あれを書いたのは、水城せとなさんの『脳内ポイズンベリー』や、翻訳家の岸本佐知子さんの考え方に触発されて、自分でも脳内にいろんな人を住まわせてみようと思ったことがきっかけでした。人間にはひとつではなく、いろいろな面があるので、それをひとつひとつキャラクターとして名付けて、自分との関係性もちゃんと作って……ということをすると、同じものごとも違った角度から見られていいなと思って。

 

可愛いものやコスメに目がない「マイメロちゃん」がいたり、理不尽な目にあったときは「この痴れ者が!」と(心の中で)相手を一蹴してくれる「女王様」がいたり。もちろん書籍に書いたものが全てではないのですが、実際ひとりの人間の中には色々な面がありますし、そのすべてが他人に正しく伝わるというものでもありません。私が出会った人の中にも、私を「ぼんやりしているな」と思う人もいれば、「ちゃんと考えているんだな」と思ってくれる人もいる。それは、私がその人とどんな風に会って、どんな話をしたか、私のどの面を見たかによって変わってくるものです。だから、たまたま垣間見えたある一面について、よく知らない人からとやかく言われても、私は気にしないですね。ちゃんと全てを見てくれる人もいますから。

 

ーー宇垣さんは作品への意見もややはっきりおっしゃるほうだと思いますが、そのあたりも含めての「強さ」はそんな風に培われているのですね。

宇垣:私はもともと自分は「ぱっぱらぱー」だと思うんです(笑)。なぜかあまり気にしたことがありませんし、悲観的になることもありません。私の友達も、どちらかといえばあまり人の意見に左右されない、心が自立している子が多い気がします。それはおそらく、自分にある程度の自信があるから。そしてその自信はどこからくるのかといったら、「何かをやった、あるいは何かをなした記憶がある」ということだと思うんです。私の友達には「勉強を頑張っていた」という子も多いのですが、勉強でも運動でも趣味でも、「努力し続けると、時にそれが結果に反映されることがある」と言う経験をしている人は、自分を信じられるから、強くいられるように思います。

さらにそんな友達が自分を認めてくれて、「美里はそれでいいよ」と言ってくれるなら、もう他の人の言葉では動じないですね。それから、私の場合は妹の存在も大きいかな? いつも「みーちゃんが一番可愛い♡」と言ってくれるので(笑)。そんな風に自分を全肯定してくれる人がひとりいれば、何も揺るがないですね。

ーー妹さん、最高ですね。

宇垣:はい。辛辣なときもたくさんありますけどね(笑)。