クリクリの大きな瞳、ちょこんとした手足、そして小さくて丸いモフモフの体……、思わず「キュン」としてしまうほどかわいいこの生き物のことご存じですか? そう、北海道に棲むエゾモモンガです。

 

北海道にはかわいい生き物がたくさんいますが、小鳥のシマエナガ、エゾリスなどと並んで人気があるのが、このエゾモモンガ。
地元では「エゾモモちゃん」とも呼ばれ、ファンがたくさんいます。
今回は、森のアイドルともいえる存在の「エゾモモちゃん」を、写真家・故 小原玲さんの写真を交えて紹介することにしましょう。

 

じつは小原さんは、写真集『シマエナガちゃん』でシマエナガの可愛らしさを世間に広めた第一人者。そんな小原さんが、昨年11月に病気で亡くなる直前まで、ずっと向き合っていた被写体がエゾモモンガでした。今回は、小原さんが撮りためてきた特別なシーンも公開します。

エゾモモンガは、北海道の森林で暮らすリス科の小動物。
大きな瞳やエサを食べるしぐさは、たしかにリスを思わせるほど似ていますが、じつは飛膜を持っていて、自由に滑空できるのです。飛ぶ時は、木の高いところまで登って行って、ジャ~ンプします。
両手、両足を「シュパッ!」と勢いよく開いて(実際には音はしませんが)、空気の流れをつかむようにして飛ぶのです。ミニグライダーみたいで、すごく速いんですよ。

 

普段は、森の中の小さなウロをすみかにしています。
直径が4~5cmもあれば、出入りでき、昼間はウロで寝て過ごします。活動を始めるのは、夕方ぐらいから。
カラスなどの天敵の気配がなくなると、姿を見せやすくなるようです。
体長はわずか15cmくらいですが、尾っぽの長さも体長に近い12cmくらいあって、ふさふさしていて、かわいいポイントのひとつです。
巣穴から「身体隠して、尾っぽ隠さず」になっている場合もたまにあり、とってもかわいいのです。ほら、だんだん会ってみたくなってきたでしょう? 

 

このエゾモモンガ、深い森林だけではなく、大都市・札幌などにあるちょっとした森でも見かけることができます。
たとえば、緑が多い大きな公園、神社、学校などで観察例があるほどで、こうした個体は人の気配にも慣れているので、フィールド観察に慣れていない人でも出会えるチャンスがあります。
とはいえ、先に紹介したように、エゾモモンガは小さい上に、基本的に夜行性。野生の個体を見つけるのは、なかなか難しいかもしれません。狙い目は、繁殖期の2~3月頃。パートナーを求めて、昼間の活動が増える時期なので、明るい時間帯にも出会えるチャンスといえます。

ところで、エゾモモンガのなかでも、一番かわいいのが、チビモモちゃんたちです。初夏の頃に、巣立ちを迎えたチビッ子たちが、巣穴から出てくるようになります。
ちょっとおっかなびっくりしながらも、好奇心旺盛な姿は、反則級のかわいさ。
しかも、このチビモモたちの姿を捉えた写真は、非常に珍しいのです。今回は、小原さんの写真でそのかわいさをたっぷりご堪能ください。
 

【写真】かわいすぎてキュンキュンするエゾモモンガ
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『写真集『森のちいさな天使 エゾモモちゃん』
(講談社ビーシー/講談社)

昨年(2021年)11月17日に撮影地の北海道で亡くなったカメラマン・小原玲さんが撮影した、エゾモモンガたちを存分に堪能できる写真集が発売中。昨年ガンに罹っていることがわかったが、エゾモモンガの撮影のために同年秋にも北海道へ。撮影している最中に病状が悪化し、撮影地に近い病院にて60歳で亡くなる。

 

「故・小原玲 メモリアル写真展」

 

カメラマン・小原玲氏のメモリアル写真展が11月24日~11月30日(※土日は休館)に開催される。写真展では、新刊『森のちいさな天使エゾモモちゃん』に収載されたエゾモモンガのほか、小原さんが追い続けたアザラシの赤ちゃん、シマエナガの写真を展示する。

2022年11月24日(水)~11月30日(木)※土日は休館
10:00~17:00 入場無料
セレモア紀尾井町本社セミナー会場


プロフィール
小原玲(おはら・れい)

1961年、東京生まれ。茨城大学人文学部卒。写真週刊誌『フライデー』専属カメラマンを経て、フリーランスの報道写真家として国内外で活動。1990年、アザラシの赤ちゃんをカナダで撮影したことを契機に動物写真家に転身。以後、マナティ、プレーリードッグ、シマエナガ、エゾモモンガなどを撮影。テレビ・雑誌・講演会のほかYouTubeに「アザラシの赤ちゃんch」を立ち上げるなど様々な分野で活躍した。写真集に『シマエナガちゃん』『もっとシマエナガちゃん』『ひなエナガちゃん』『アザラシの赤ちゃん』(いずれも講談社ビーシー/講談社)など。


写真/小原玲
構成/講談社ビーシー書籍出版部