親の介護で何かと気になる「お金」の話。現実的にぶっちゃけどうなの? 何が大変だった? などと誰かに根掘り葉掘り聞ければいいものの、そう簡単にもいきません。今では介護アドバイザーの肩書きを持つ作家の鳥居りんこさんも、実のお母さんの介護に際しては「お金」にまつわる知識不足で右往左往したといいます。そんな鳥居さんの書籍『増補改訂版 親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)は、鳥居さんが直面した「介護とお金」の切実な問題と、それらを解決するための知識をわかりやすく紹介する一冊。そこで今回は鳥居さんに、親とお金の話、そして10年に及んだという介護生活について、インタビューでお聞きします。

鳥居りんこ(とりい・りんこ)さん
作家&教育・介護アドバイザー。2003年、『偏差値30からの中学受験合格記』(学研プラス)がベストセラーに。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『増補改訂版 親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)など多数刊行。


ややこしすぎる各種申請。同じ経験をしてほしくない


――鳥居さんの本を拝読して、介護の体験談と介護にかかるお金、そして事務手続きのお話……知らなかったことばかりでとても勉強になりました。初版が2018年、今回は増補改訂版ということですが、介護制度はだいぶ変わっていましたか?

鳥居りんこさん(以下、鳥居) 制度にまつわるデータ部分は全部作り替えましたね。介護保険の内容は約3年ごとに改正があって、初版からは4年が経っていたので。複数のファイナンシャルプランナーの方にもご協力いただきました。もちろん、一次ソースは厚労省や官公庁のホームページから改めて調べ直したわけですが、相変わらずまあ難しいし、わかりづらい(笑)。実際に母を介護していた当時も、お役所から「これじゃダメです」って申請書類を突き返されて、心が折れそうになること多々でした。

ーー文筆業の鳥居さんでさえ突き返されるとは、やっぱりそれだけ制度自体が複雑なんでしょうか……。なんだか、介護が始まる前から震えが止まりません。

鳥居 複雑ですね。介護経験がある方はご存知だと思うんですが、介護保険や介護支援って「ただ待っているだけではもらえない」ものなんです。全て自己申告制なんですね。それなのに申請書類がやたら複雑で、だから諦める人も当然出てきてしまうんです。育児に関する補助金なんかもそうですよね。国の支援制度は基本的に全部同じで、知識と知恵で戦わないと切り捨てられてしまう。私はそれを知らずに散々泣きを見てきたので、皆さんには同じ経験をさせまいと思って、この本を出すに至ったわけです。


会話の糸口は「どう死にたいか」より「どう生きたいか」

写真:Shutterstock

ーー「介護とお金の話」は切っても切れない問題とはいえ、親が健在のうちに介護やお金の話を切り出すのは、なかなか難しいと感じています。

鳥居 お金のことを単刀直入に尋ねてしまうと「そんなに死んでほしいのか?」「遺産目当てなのか?」と不信感を持たれるので、避けた方が無難ですよね。経験としてわかったのは、普段のコミュニケーションの中で、例えば「これから年金制度も色々変わるみたいだけど、生活費足りてる?」みたいな会話を投げかけると、経済状況がわかるような答えが返ってくるということ。介護の話も考え方は同じで、ストレートに「どう死にたいか」と聞かないことです。

ーー確かに、お金と介護の話は「親の死」に直結するような気がして聞けないのだと今ハッとしました。生活の様子を尋ねる雑談なら、自然にできそうです。

鳥居 もっと言えば、日常会話の中で「これからどうやって生きたいか」を聞くんですね。息子や娘夫婦と一緒に暮らしたいと考えるのか。一人でも田舎で畑仕事をしているのが楽しいのか。親が「こう生きたい」という思いを基盤にして、できることを考えていく。そうやって未来志向の会話を心がければ、介護に対する親の考えも見えてくると思います。

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親の具合が悪くなる前に、最低限やっておきたいことチェックリスト
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