2022年の4月、料理家・栗原はるみさんは自身の新パーソナル・マガジン『栗原はるみ』を講談社から新創刊しました。
12月には3号目が発売され、75歳でのチャレンジにますます評判が高まっています。
一度はもう作らないと決めていたという雑誌。なぜもう一度挑戦する気持ちになったのか? この一年を振り返り、栗原さんの思いの変遷を、本誌から紐解いてみます。
これからの私の生き方を見てほしい
栗原はるみさんは、通算100号の節目で前雑誌『haru-mi』を卒業しました。
もともと、「100号で雑誌の仕事は終わりにする」と決めていた栗原さん。
大きな仕事をやり終えたら、これまで行けなかった場所へ旅をするなど、夫婦の時間をたくさん過ごそう。そう話し合って、その日を心待ちにしていました。
しかし、最愛の夫・玲児さんは、2019年の夏、この世を去ります。
悲しみに打ちひしがれながらも100号を世に送り出し、一人を痛感した栗原さん。「残された人生」をどう生きるべきか。玲児さんなら、どう言うだろう。
自問自答の日々が続きました。
次第に栗原さんの心に、新しい光が差し込みます。これまでとは違う環境で、今の私にできる雑誌を作ってみたい、そんな風に思うようになったそうです。
創刊号の巻頭メッセージには、こう記されています。
最愛の夫を失った寂しさ、孤独感、虚しさ。そのことに耐えられないつらい日々が今も続いています。
だけど、そんな私を見て、きっと玲児さんは「泣いている時間はないよ、もっともっと残された人生を楽しんで」と言うと思います。
残りの人生を悔いなくすごすために、これからひとつずつ丁寧にやっていこうと思っています。
私が今やりたいこと、やらなければいけないこと、伝えなければいけないことを読者の皆さんに届け、お互いに励まし合いながら、新しい雑誌を楽しく作っていけたらと思います。
これからの私の生き方を見ていてほしい。日々の暮らしは変わらないけれど、どんな小さなことも見過ごすことなく、そこから新しい楽しみを見つけられたら、きっと自分が変われるのかなと思います。
残された人生でやりたいことを、すべて形にしたい
新雑誌をスタートすると同時に、栗原さんは「残りの人生でやりたいことを100個見つける」という作業を重ねていました。
息子の心平さんに勧められて、始めたそうです。スマートフォンのメモ画面には、栗原さんが記した「やりたいこと」がたくさん並んでいます。
新雑誌では、栗原さんのやりたいことを一つずつ形にしています。一人のご飯を楽しく作ること。一人で行ける居酒屋やレストランを探すこと。ギターの練習。京都への旅、などなど……。
「私が大切にしていること。」をメイン特集とした2号目では、ますます意欲的に取材・撮影に取り組む栗原さんの姿がありました。「この雑誌を作ることで、旅をしたり、初めてのことにも前向きに取り組んでみよう、という気持ちになっているのです」と栗原さんは語っています。
私に残されたこの人生は、玲児さんがくれたものなんだ、と思うと、1日も無駄にすることはできない。そうやって毎日を過ごしています。
彼の思いに応えて、私は幸せにならないと。だから私は、新しい一歩を踏み出すことができたのです。どんなに寂しくても、もう一度立ち上がること。たった一度の人生をどう生きるか、自分で考えなければ。
雑誌を作ってみたら、少しずつ前に進めた
新パーソナルマガジン『栗原はるみ』は多くの読者に歓迎され、12月には、3号目が発売になりました。
大特集は、本人にとっても初めてという器と食器棚がテーマに。特別付録には「暮らしとカレンダー2023」、別冊「おいしすぎる、おせち。」がついています。
別冊だけでも、一冊の本にできそうなボリューム。こうした大盤振る舞いは、「出し惜しみはしない」という栗原さんの心意気です。
栗原さんは、3号の巻頭メッセージで、こう語っています。
私の心の中には、「喪失感と悲しみを抱き続ける道」と「元気を出して前向きに生きる道」の2つがくっきりと並んでいます。
いまだに一人になると、ふと思い出しては涙が流れる日々が続いていますが、このところようやく、“悲しみの道”から“元気な道”へ、小さな橋を架けてみようか、と言う気持ちが芽生えてきました。
こんな感情は、人生で初めてのこと。この先もっと時間が経てば、その橋の幅は少しずつ広くなっていくのかもしれません。私のような思いをされている方が、きっと日本中にいらっしゃるんじゃないかな……と想像して、本当に少しずつですが、私も前に進んでいます。
新雑誌を創刊した2022年は、栗原さんにとって、あっという間の一年。
そして、最高の一年になったそう。悲しみの淵から立ち上がり、やりたいことを一つずつ叶えながら、前を向きはじめた栗原さんの心の変化が、この3号の雑誌のなかでも発見することができます。
栗原さんの思いが詰まった『栗原はるみ』3号。
年末年始と、冬の楽しみ方がたっぷりと詰まった一冊です。栗原さんが提案する暮らしの中の小さな喜びの数々を、ぜひ体験してみてください。
雑誌『栗原はるみ』創刊3号
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特別付録①
別冊『おいしすぎる、おせち。』
今こそ伝えたい、栗原はるみが母から受け継いだ基本のおせちのレシピ集は、まさに永久保存版。「お正月にあると嬉しいもう一品」、「新年を迎えるためにやっておきたいこと」も掲載し、大ボリュームの68ページです。
特別付録②
暮らしとカレンダー 2023
読者のリクエストで実現! 美しい写真で栗原家の庭、四季の暮らしを楽しめる、2023年度のカレンダーです。
特別付録③
音声コンテンツ「聞いて楽しむ栗原はるみ」
雑誌の裏話・秘話を栗原はるみがラジオ形式で配信。「初公開の食器棚と、大切な宝物」「鍋料理がおいしくなる秘訣とは」など、テーマごとに計8コンテンツを順次公開中。
メイン特集
私のうつわ、食器棚。
栗原はるみ、初めての器特集。人生がつまった食器棚、想い出の器や数々のコレクションを、器にまつわるストーリーとともにご紹介します。
レシピ特集
準備でおいしい、5つの鍋。
いつもの鍋も、具材の切り方、盛り付けで味も楽しみ方も変わる。冬に嬉しい、鍋レシピを紹介します。
ファッション特集
冬に着たい服。
読者からの反響も多い、栗原さんの私物&コーディネート。寒い冬も楽しく装う、ダウンコート、モヘアニット、ついつい買ってしまうニットの帽子……など。
構成/片岡千晶
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