主要の3人以外のキャラクターも魅力的だ。レディー・フェイ・ズーは中国系。昼は家業のクリーニング屋を手伝ったり映画の字幕を書いたりしているが、夜はタキシード姿や妖艶なチャイニーズ・ドレスでパーティーに出て「私のかわいいプッシーたち」と歌い、男性も女性も魅了する。ハリウッドで初めて名をなした中国系の女優アンナ・メイ・ウォンがモデルになっているという。気になってアンナ・メイ・ウォンをググってみたら、1920年代ハリウッドでデビューはしたものの、中国系の彼女には妖婦や売春婦、奴隷やメイドの役しかつかず、そのことが不満でヨーロッパに渡ったと知った。彼女は生涯マレーネ・デートリッヒと親交があったそうだ。レディー・フェイ・ズーにたいていの人がデートリッヒを連想するであろうタキシードを着せたのは、彼女たちの友情へのオマージュかもしれない。

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そこから約百年後、2020年のアカデミー賞では、『ノマドランド』で中国系の女性クロエ・ジャドが監督賞をとった。時代は少しずつだけれど変わっている。人種や性別だけでなくあらゆる面で平等が問われ、ハラスメントという概念をたいていの人が意識するようになった。つまらない時代になったのか? 否、マシな時代になったのだ。そんな時代に生きる私たちだからこそ、横暴でだらしなくて勢いだけはあふれていた頃の空気を知っておくべきだと思う。

 

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