「もっと笑わせてやるぞ」「やりきった」を少しずつでも積み重ねた


ーー松本さんの“怪演”が大きな話題になりましたが、撮影に入る前からご自身の代表作になることを確信していましたか?

松本:いえいえ、最初は不安でした。1話の台本で「たけのこたけのこニョッキッキ」というセリフを見たときは、戸惑いで脳がフリーズしましたから(笑)。でも、撮影現場でスタッフさんが俳優に代わってそのシーンのリハーサルを行なっていたときに、美保子のセリフで監督が爆笑していたんですよ。そこで火がついて、「もっと笑わせてやるぞ」と。もともとコメディ要素が強いお芝居に挑戦してみたかった自分の意思と、スタッフさんの期待が重なって、最初は想定していなかったレベルの癖が強いキャラクターに仕上がりました。

松本若菜「腐っていた時期もある」40歳目前の遅咲きブレイクは“自分に嘘をつかない姿勢から”_img3

 

ーー『松の素』のエッセイパートには、仕事が少なくて「腐っていた時期もある」と書かれていました。それでも40歳目前で大ブレイクを迎えることができたのは、地道に“自己ベスト”を更新することを怠らなかったからでしょうか?

松本:本当に、自分の中で劇的な意識改革を行なったわけではなくて、毎年、少しずつでも俳優としてステップアップすることを目標に活動を続けてきたんです。自分が「やりきった」と思えるお芝居を心がけていたら、徐々に松本若菜を知ってくださる人が増えていって、オファーをいただける機会も増えていった感覚です。昨年のような大嵐が起きることは予想していませんでした。

 

ーー2022 年は仕事の状況が大きく変わった1年だったと思いますが、私生活でも変わった部分はありますか?

松本:スーパーでレジ袋を買うようになりました(笑)。以前はレタスや大根も手で持ち帰っていたのですが、マネージャーさんに「さすがに生活感が出過ぎじゃない?」と言われまして。だからエコバッグを忘れてしまった日は、仕方なくレジ袋を買っています。

今、ありがたいことに先々のスケジュールが埋まっていて、すごく嬉しいのですが、プレッシャーも感じていて。これまでは同世代の俳優さんたちがライバルだと思っていましたが、今後は“去年の自分”になってきます。これまでのように自己ベストを目指して、引き出しを増やし、また運命的な役と巡り会えたら嬉しいですね。