※当記事は、作品の内容に関わる記述を一部含みます。
ソレは中国人で、韓国語を流暢には話せません。へジュンとの会話でもあまり多くは語らず、時に翻訳機に頼るほどです。しかしたどたどしく言葉を紡ぐ様子はどこか危うげ。視線や仕草で意思表示をし、時に見せる挑発的な態度がとてもセクシーなんです。
この二人の「言葉の壁」は一見もどかしいのですが、そのじれったさが観る人の心を刺激しているように思えます。また、ソレの中国語を翻訳機で韓国語に変換するシーンでは、機械的な音声が二人の関係におけるミステリアスな要素をより強めていたように感じました。
夫殺しの疑いがかけられたソレを、へジュンが刑事として見張り続けるシーンは、特に引き込まれました。双眼鏡で彼女を覗いているうちに、どんどん心を惹きつけられていき、気づけば容疑者を見張るというよりも彼女の私生活を覗き見するストーカーぎりぎりの状態になっているヘジュン。
さらにはそのへジュンの視線に気づきながらも、見張られていることに快感を抱いているソレ。そんな二人の関係は非常にアブノーマルで、へたなベッドシーンよりよっぽどエロティックなのです……。
視線と視線が交差し、沈黙の中で静かに湧き上がる情熱。本作を通じて、「プラトニックなエロス」という新しい世界観を見せられた気がします。
結局ソレは、最強のファム・ファタルだった?
ソレとはほぼプラトニックな関係を維持しながら心の結びつきを強めていった一方で、妻は対照的。へジュンと妻は16年8ヵ月の夫婦生活において、セックスレスとは無縁の関係を維持しています。
妻は「セックスレス夫婦の55%が離婚する」と序盤で言っているように、夫婦の営みは夫婦関係における最重要事項だと信じています。「憎み合っている時でも毎週しなくちゃ」とも発言しており、彼女にとってはそれこそが愛の象徴なのでしょう。
妻がザクロを剥きながら「ザクロは閉経を遅らせる効果があるらしい」などと言ったり、夫に向かって「スッポンが男性ホルモンに効くみたい」と勧めていることからも、“男と女”であることへのこだわりを強く感じます。
しかし皮肉なことに、愛妻家だったはずのへジュンが心を奪われたのは、プラトニックな関係のソレだったのです。肉体的なつながりよりも圧倒的に強い、心のつながりが存在するということを見せつけられた気がしました。
言葉も完全には通じ合えず、セクシャルな関係があるわけでもないのに、既婚の男が何もかも失うほど愛してしまう女性……。そんなソレは、妻にとっては脅威でしかないはず。ある意味、最強のファム・ファタルだと言えるのかもしれません……。
男女の深い心の結びつきを美しく描いた、真のラブストーリー『別れる決心』。
1回観ただけでは捉えきれなかったことも、2回、3回と繰り返し観るうちに理解が深まり、新たな気づきが次々と出てきます(BTSのRMは5回観たそうです)。
ぜひ皆さんも、『別れる決心』をご覧いただき、大人の愛のストーリーを思う存分に堪能してください!
“禁断の愛“のエロスと大人の色気ダダ漏れ…映画『別れる決心』パク・ヘイルさんインタビューはこちら>>
禁断の愛を描いたサスペンスが、最高にロマンティック!
▼横にスワイプしてください▼
構成/山本理沙
前回記事「41歳バツイチの私が、また恋をしたいと思った理由。韓国ドラマ『イルタ・スキャンダル』」>>
- 1
- 2
Comment