怖がることなく検査を受けられる世の中に


へえ、今はそうなんだ!と一気に情報が更新された人もいるかもしれませんね。私も初めて知った時は、驚きました。PrEPとU=U、もっと多くの人に知られるといいですね。検査の心理的ハードルを下げ、効果的な予防法や治療にアクセスしやすくするためにも、HIVに関する正しい知識を広め、偏見や差別をなくすことが重要です。

写真:Shutterstock

ちなみにオーストラリアでは、このPrEPの導入により、2030年にはHIVの新規感染者をなくすことができる見通しだそうです。

 

市民と与野党が連携して取り組み、2016年に国としてPrEPの導入を実現。国がPrEPを無料で提供し、民間の研究者や地域の専門家と力を合わせて普及に努めた結果、オーストラリアは現在、世界でも数少ない「3つの90(the three 90s)」を達成した国となりました。「3つの90」とは、HIV感染者の90%は診断を受けており、そのうち90%は治療を受けており、そのうち90%はU=Uの状態にある、つまり性行為を通じて他人に感染させる恐れのない状態であるというものです。最も人口の多いニューサウスウェールズ州では、2030年にはHIVの新規感染をなくすことができると見られています。

日本では、PrEPは国の認可を待っている状態です。保険適用されるかどうかは現時点ではわかりませんが、もし適用されれば普及が進み、将来的に新規感染をゼロにすることができるかもしれません。子どもたちが性教育で性感染症について正しく知り、その際にHIV感染のPrEPとU=Uについても知識を得られるようにすることも必要でしょう。

日本では現在でも、HIVに感染していることを理由に内定を取り消された例など根深い差別があります。もしも、HIVに感染していることがわかったらこの社会では除け者にされてしまう、仕事や友人を失うかもしれないという不安があったら、検査を受けるのが怖くなってしまいます。怖がることなく検査を受けられれば、早期の予防や治療につなげることができます。病気に対する偏見や差別の理不尽さや正確な知識の大切さは、新型コロナ感染症のパンデミックを通じて多くの人が実感したのではないでしょうか。

HIV感染は、誰にとっても他人事ではありません。予防法や治療法があること、人は病気や属性によって差別されてはならないこと、病気の不安などで困った時には必ず相談に乗ってくれる専門家がいることを知ってほしい。この記事を最後まで読んでくださったあなたには、ぜひ家族や友人にも伝えてほしいです。

 


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