2007年にピュリツァー賞を受賞した戯曲『ラビット・ホール』。とある出来事をきっかけにして深く傷ついてしまったそれぞれのキャラクターの心。それらが家族間の日常的な会話を通して、時間をかけて再生に至る道筋を繊細に描いた傑作として知られています。2010年にはニコール・キッドマンの製作・主演により映画化もされ、数多くの映画賞に輝きました。

主演の宮澤エマさんが演じるベッカは、どうしようもない悲しみを背負ってしまい、夫婦でもがいている。それを時に近くで、時に距離を置きながらも、常に温かく包み込んで見守る、ベッカの実母を演じるのがシルビア・グラブさんです。

昨年放映されたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での藤原兼子役も記憶に新しいはず。今やミュージカルの舞台のみならず、ストレートプレイ、そして映像作品でも活躍を続けるシルビアさんですが、今回の『ラビット・ホール』はそんな彼女にとっても新しいチャレンジなのだとか。インタビュー前編では、その見どころや魅力について、ご本人ならではの言葉で教えていただきます。

傷ついた家族の再生の物語。シルビア・グラブ、リアルに進む会話劇への新たな挑戦【ラビット・ホール】_img0


シルビア・グラブ しるびあ・ぐらぶ
Sylvia Grab

1974年7月17日生まれ、東京都出身。ボストン大学音楽学部声楽家卒業。1997年の『Jerry’s Girl』に出演依頼、数々の作品に出演。2008年『レベッカ』のダンヴァース夫人での演技が評価され、第34回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞。2012年には『国民の映画』のツァラ・レアンダー役の演技により読売演劇大賞・優秀女優賞を受賞。2022年には日本の文化・芸能の保存、向上に寄与した人物を表彰する第43回松尾芸能賞・優秀賞を受賞するなど、女優としてミュージカルはもとより、ストレートプレイや映像など幅広い分野において活躍中。出演作品は多岐にわたるが、三谷幸喜作品への出演も多く、2022年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では藤原兼子を演じ、好評を博した。2014年、2018年、2020年には「三谷幸喜のショーガール」、また2018年、2021年には三谷幸喜作・演出のミュージカル『日本の歴史』、2022年は『ショウ・マスト・ゴー・オン』に出演。その美貌のみならず、コメディエンヌの才能をいかんなく発揮して、観客を魅了した。2023年12月にはフル・オーディションによって選考を勝ち抜き、ミュージカル『東京ローズ』へ出演することが決まっている。

 


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【写真】少女のようで大人のような変幻自在の表情を見せる俳優シルビア・グラブ
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