登録者数35万人! 人気のYouTubeチャンネルを主宰するパリ在住エッセイスト・井筒麻三子さんが、待望の初書籍『GORO GORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』を4月14日に刊行。今回は新刊にも掲載した、フランス人の気質についてのお話をひとつお届けします。
私がパリに住んで最初に驚いたのが、いろんな人が私に道を聞いてくることでした。市役所のある駅前に住んでいたので、土地勘がある人だと思われたのかもしれませんが、とにかくしょっちゅう尋ねられるのです。
「あなた、駅はどっち?」なんて言う質問ならなんとか答えられるけれど、「○○のお店はどこかしら?」などの込み入った情報はお手上げ。聞かれるたび「どう見てもアジア人でしかない私に聞く?」と不思議に思っていました。
しかしパリ暮らしも長くなってくると、段々彼らの思考が理解できるように。どうもフランス人にとっては、自分が疑問に思ったこと、感じたことは、その場で口に出さないといられないみたいなのです。
とにかく思ったらすぐ行動しないと気が済まないので、道に迷った人だけでなく、知らない人から話しかけられる現象は日常的に起こります。
スーパーで買い物をしていると、年配のマダムから「これはいくらって書いてあるかしら?」、マルシェで花梨を買っていると後ろの人から「それ、どうやって食べるの? 生で食べるの? どうするの?」、地下鉄で隣の席に座ったムッシューがじっと足元を見ているなあと思ったら「そのサンダルいいねえ。どこのもの?」、変な行動をしている人がいる、と思うと、そばに居た人が目を合わせてきて「何がしたいのかしらね」と笑う、などなど。
最初の頃はいちいち驚いていた私も、慣れるにしたがって知らない人との小さな会話が楽しいなと思うようになりました。さっきまでまったく無関係だった人でも、ちょっと会話をすることで「なるほど、ありがとう」となり、「いい1日を!」と言い合って別れる。なんでもない瞬間が、ちょっと楽しい、ほっこりしたひとときになった気になるからです。
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