ずるい言葉③「いいお嫁さんになれるね」

 

「私は私のために料理を作って、そして食べてよい」という基本原則を無視するこうした発言は、かなり強固な性別役割分業規範の持ち主でなければしないでしょう。たとえば、こんな発言をする人は、「自分で食べるだけなんだから、料理は最低限できればいい」と考えている女性に対して、「そんなんじゃお嫁に行けないよ」くらいのことは言ってしまいそうです。

ということで、こんな発言をする人は性別役割分業規範の持ち主として、自分のプライバシーに踏み込ませないほうがいいでしょう。「自分で食べる用に自分好みの味付けにしてますけどね」と返事をして、あくまで「私作る人、私食べる人」であると念押ししてもよいですが、「またまた、ご謙遜を」と話を蒸し返されるのも面倒だし、受け流すのがいちばんよいかもしれません。

 

その場合でも、場をつなごうとしてお礼らしきことを言ってしまうのは避けたいですね。お礼を言うと「いいお嫁さんになれるね」という言葉を受け取ったことになってしまい、結果として「女性は夫のために料理を作るもの」という前提を受け入れたことにされてしまいますから。

もちろん、妻が夫やそれ以外の人のために料理を作り、食べてもらうことそのものが悪いことだ、と言っているわけではありません。

ただその場合でも、それがあくまでその女性個人の希望であって、「料理をする女性は『嫁』にふさわしい」という考えが正しいわけではないことには注意すべきです。