5人の関係がとても濃密だから、相手によって受ける影響がとても大きい


前回から4年の年月を経た、再演。エンターテインメント業界はコロナ禍の影響も強く受け、加藤さんご自身のみならず、キャストの皆さんも様々な変化を体験してきたはず。

加藤:少なからず、それらも影響していると思いますし、今回演出の石丸さち子さんが描きたいものが、彼らの繊細なところというより、“生き急いでいる感じ”や“バンドとして成り上がるという強い渇望”だとおっしゃっていたんです。

 

若いときはそんなに物事を深く捉えないじゃないですか。今日ダメだった、でも明日はどうにかなるさ、というようにあまり反省することもないし、昨日ケンカしていたのに翌日には何事もなかったように振る舞うとか。でも、その中で生まれてくる、ちょっとしたヒビみたいなものは繊細に描きたいと思っています。特にアストリッドが出てきてからのスチュに対するジョンの心の揺れ動き、ですかね。

 

――再演の稽古が始まる前にご自身で用意してきたジョン像と異なるところはありましたか?

加藤:ある程度想定していたものもあります。でも初演でやっていたからこそ改めて見えてきたジョンの掴みどころのなさがあって……。やはりジョンには、普通の人では考え付かないような気持ちの揺れ動きがあり、どうやったらそこに到達するんだろうって、何度やっても見えてこない部分があるんです。でもそれって“分からないこと”が正解で、何度も演じて積み重ねないと到達できない気もするので、頭で考えずに体当たりしていこうと思っています。

――加藤さんは普段もお稽古を重ねることでゴールに向かっていくタイプですか?

加藤:もちろんそうです。ただ、このお芝居ではこれだけ濃密な5人の関係性があるので、相手によって受ける影響がとても大きい。ひとりで芝居をするのではなく、5人でひとつの“ビートルズ”というバンドなので、それはほかの舞台とは違うところだと思います。

――ご自身とジョン・レノンとの共通項はありますか?

加藤:それが、ないんですよね、あまり(笑)。音楽という共通ワードはありますが、僕の場合はそういう下積み時代もないですし、正直、ジョンの気持ちは理解しがたい部分もあるんです。でも、だからこそ演じられるというのもあります。ビートルズやジョン・レノンに対してリスペクトがあり過ぎてしまうと、その憧れは超えられないと自分で勝手に思い込んでしまいますから。

そういう意味では、いい距離感だと思います。割り切ることができるからこそ、ジョンになれる。その面白さを楽しんでいます。

――実在の人物を演じられるときはやはり緻密に資料を調べたりされますか?

加藤:はい。色々と資料をあたって、その役を自分に落としていくという作業を行いますね。人それぞれだと思いますが、共通項を見つけるというのはとても大事だと思うんです。でも、今回ばかりは本当にないので(笑)、どうしたもんかなと思ったんですよ。

でも自分ひとりで行う役作りよりは、皆で「せーの!」で演じたときに感じる感触というか、その場にどの自分がいるべきかを考えなくてはいけないので、“ジョン・レノンの役作り”というよりは、“ビートルズの役作りの中の、ジョン・レノン”という感覚でいます。