秋開始接種の対象は? 使用されるワクチンは?


山田:そうですね。5歳〜64歳までで、基礎疾患がなく、医療従事者等でない方の場合は、秋開始接種が検討されています。

 

編集:なるほど。WHO=世界保健機関が、健康な成人や子どもには定期的な追加接種を「推奨しない」としていますが、どのように考えればよいでしょうか?

山田:それは、いくつか語弊がありそうです。まず、健康な成人や基礎疾患のあるお子さんには、初回接種後の1回目の追加接種までを「推奨する」としていますので、追加接種をまだ受けていない方は確実に受けていただくのが良いでしょう。一方、その後の追加接種については、安全であるとしながらも、追加の効果が限定的であるため、「ルーチンには」推奨しないとしています。この「ルーチンには」という点は少し注意が必要で、今後新たな変異ウイルスが問題になるといった場合には推奨が変わりうることを含んでいると思います。

編集:ちなみに、「ファイザーとモデルナ、どちらを接種するべき?」という質問が届くこともありますが、いかがでしょうか?

山田:いろいろな先進国の例を見ていますが、どちらかを特に推奨している国は特にないと思います。というのもまず、今後どんな変異ウイルスが流行するかは予想が難しいこと、またファイザーとモデルナ、2つの効果の差というのは、現時点では各変異ウイルスに対して試験管の中の抗体のレベルで見られた差であり、実際に人レベルで現在流行している変異ウイルスにどれくらいの差を生み出すものなのかははっきりとわかっていません。結論としては、ファイザーであれ、モデルナであれ、手に入るものを接種する、というスタンスでよいかと思います。

編集:どのような変異ウイルスが流行するかの予想が難しい、ということは、日本でも秋開始接種に、どのようなワクチンが使用されるのかも未定、ということでしょうか?

山田:そうですね。この先の変異ウイルスの動向を見ながら、おそらくこの冬に流行するであろうものを予測し、新しいものが必要であれば作製し、接種するということになると思います。必ずしも現在使われているものを接種する、というわけではないかもしれません。

2022年から2023年の世界の動向を見ていると、やはり冬場に感染流行のピークを迎えています。ですから、12月〜1月の感染流行の前、つまり秋に、多くの方を対象とした追加接種が行われるという接種スケジュールになっているのではないでしょうか。

編集:情報や変更が多く混乱していましたが、スッキリと理解できました!ありがとうございました!
 

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構成/新里百合子
 

 


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