人生は、何もしてないとあっという間に暮れになっちゃう

 

――映画の主題は、“人生には、遅すぎることなんてひとつもない”。70代になって改めて青春の輝きを取り戻していく主人公たちの物語です。

希望を持つというのは人間の美徳でさ。アリンコやタヌキはたぶん希望という言葉は知らないんじゃないかな。そこはやっぱり人間に生まれた良さだから。どんなときも希望を持たないととは思うよね。

 

――藤さんご自身もわりとポジティブな性格ですか。

そうですね。俳優になって最初の4年とか5年はね、何をやったってふわふわ地に足が着いてないような感じがしちゃって、人の真似ばっかりしてるような感じでしたけど。でも不思議と希望だけは捨てなかった。そのうちうまくいくんだっていう根拠なき自信はありました。

――それは若さゆえなのか。それとも元来そういう性格なのでしょうか。

若さゆえかもしれないですね。そうじゃなきゃやってられないでしょう。若いうちなんて何もないんだから。せめて希望くらいないとね。

 

――きっと人はそうやって何もないところから経験を積み、成功体験を得て、自信を培っていくんだと思います。そうして人生を歩まれてきた藤さんが、老いてなお生きるのは楽しいなと思う瞬間はどんなときですか。

毎日思いますよ。人生なんていうのは長いようで本当に短いですからね。僕もね、仕事がないときは1日があっという間に暮れちゃうんですよ。だけど、たとえば1ヶ月映画の撮影に入るでしょう。すると、この30日がいつ終わるんだろうと思うくらい時間が延びるんですよね。それが、楽しくもあり冒険だよね。

ゲーテだっけ? 最期に「もっと光を!」と言ったのは。人生は、何もしてないとあっという間に暮れになっちゃう。光っていうのはいいもんだなと思いますよ。