“自分が、自分が”ではデュエットって崩れちゃう


――彩吹さんは2018年に新演出版 ミュージカル『マリー・アントワネット』で佐藤さんと共演も。

彩吹:最初に共演させていただいたのは、2015年に行われたシアタークリエでのコンサート『スパークリング・ヴォイス -10人の貴公子たち-』。宝塚の男役だったOGとLE VELVETSさんのコラボコンサートでした。そうだよね?

佐藤:はい。もう8年くらい前ですね。そのときが初めまして、でしたね。

彩吹:面白い企画だったんです。LE VELVETSの皆さんとタカラジェンヌのOGが一緒になって様々なミュージカルナンバーを歌ったり、『エリザベート』の女性だけのナンバーをLE VELVETSの皆さんだけで歌ったり。もちろん、LE VELVETSさんのことは存じ上げていましたけど、皆さんの人となりを知ることができて……。その中でもシュガーはしっかりしてそうに見えるんだけど……、意外と末っ子キャラじゃない?

佐藤:そうです。LE VELVETSの中では末っ子ですね。実際は一人っ子ですけど。

彩吹:可愛らしいな、この人、ってそのときに思ったんです。後に2018年にミュージカル『マリー・アントワネット』でご一緒させていただきました。直接絡む役どころではありませんでしたが、一緒のカンパニーにいると色々見えてくるんです。パフォーマンスの魅力もそうだけど、普段の佇まいや人当たりの良さとか、本当にきちんとされている方だなって思いました。

何よりもやはり『マリー・アントワネット』でルイ16世を演じていたときのシュガーの歌声に、私は感銘を受けて。声の深さや魅力は言わずもがなですが、その緻密に構築された歌唱に圧倒されました。ミュージカルって本当に難しくて、そこに“ゴール”はありません。要は、芝居心をどういうふうに音符に乗せていくかなんです。シュガーはそれを緻密に計算して練習して、構築しているんだろうなって、舞台袖で日々こっそり聞いていました。毎日違うんですよ、シュガーの歌って。

佐藤:嬉しすぎる~! ちょっと泣きそうになっちゃいます……。

彩吹:袖で出番を待っているタイミングだったので、集中してほかのキャストの方々の歌を聞いていたんですが、その中でもシュガーのルイ16世の何とも言えない感情とメロディと音量と声質と……。いろんなものを織り交ぜながら、それらを丁寧にお客様に対して表現しているんですよ。こんな言い方するのは嫌なんだけど、その“仕事っぷり”が素晴らしくて!
仕事と言えば仕事なんだけど、仕事という言葉じゃないよね……。なんだろう。“技”なのかな。

佐藤:彩吹さんはガラリと雰囲気を変えることができるんです。昨年ご一緒した京都で改めて、歌が本当に上手な方だと思いました。幅広い声質を持っていて。『マリー・アントワネット』でご一緒したあの楽しい感じと、僕が拝見した『フリーダ・カーロ』で表現されていた、あの苦悩。本当に役になり切っていた姿を見て、「ああ、本当にすごい表現をされる方だ」と圧倒されました。そんな彩吹さんに、僕のことをあそこまで褒めてもらえるのは嬉しい限りです!

 

彩吹:嬉しいな。シュガー、ありがとう! デュエットって相手の声質というか、周波数というか、そういうものをキャッチして合わせていくんですが、シュガーと私はお互いにそれをやっていくタイプ。声の“当たりどころ”というか、例えばドの音を伸ばすときに、どう広げていったらデュエットとしてまとまるかなと思いながら色々試すんです。その瞬間に直感的に感じたことをやってみても、シュガーは受け入れてくれる。

 

佐藤:(笑)。普段デュエットするときは、声の領域を考えつつ、自分のバランスとボリュームを調整していくんです。彩吹さんと歌っていると、僕がそれをやろうとしたときに、すでに彩吹さんがやって下さっていると感じることが多々あって。それを彩吹さんに話したら、「私も結構合わせることが多かったから」と言われて、なるほどって思いましたね。 “自分が、自分が”となると、デュエットって崩れちゃうじゃないですか。いかにふたりでいいものをつくるか――。そういう気持ちで臨んでます。