要介護認定がなくても入居できる5つの施設


聡子さんのように、親がひとりで残ってしまった場合は、リスクを少しでも減らすために施設入居を検討するというのも1つの案です。施設=介護施設のことですが、介護施設には大きく分けて「公的施設」と「民間施設」の2種類があります。公的施設は主な設置主体が地方自治体や社会福祉法人、医療法人で、民間に比べて費用が抑えられる傾向にあります

では、介護認定を受けておらず、介護サービスはまだ必要ない「自立」の状態で利用できる施設には、どのようなものがあるのでしょうか。主に以下の5つが挙げられます。

①サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)2万7598戸
「サ高住」と呼ばれる60歳以上の方向けの賃貸住宅。見守りサービスと生活相談サービスが必須で用意されています。

②健康型有料老人ホーム(民間施設)488戸
60歳以上の方が生活サポートを受けながら暮らす施設で、自立した高齢者を対象としています。

③住宅型有料老人ホーム(民間施設)9656戸
原則60歳以上の方向けで、介護サービスは行われません。要介護認定を受けた場合は、訪問介護などの在宅サービスを外部と契約して受けることになります。

④自立型ケアハウス(公的施設)5万9013戸
60歳以上で一人暮らしが困難な方、または家族から支援を受けられない方が入居できる施設です。

⑤養護老人ホーム(公的施設)3万5628戸
経済的な理由で在宅での介護サービスを受けられない方向けで、認定審査が必要となります。

記載した居室数はすべて2020年10月時点での自立者向けの戸数です。こちらの数を見ていただければ分かるように、自立でかつ経済的に困窮していない方は、民間が運営する①の「サービス付き高齢者向け住宅」が圧倒的に入居しやすいとも言えます

また、上のリストにはあえて入れませんでしたが、「データから見た高齢者住宅・施設の需給バランス」からは「介護付有料老人ホーム」の自立者向け戸数が、2万4926戸とサービス付き高齢者向け住宅に迫っていることがわかります。

「介護付」と付いているものの、介護付有料老人ホームの中には①入居対象を要介護1以上に限定した「介護専用型」と、②自立・要支援の方でも入居できる「混合型」の2つのタイプがあります。②の混合型はさらに細かく分かれており、要支援・要介護の方のみが入れる施設と、自立の方も受け入れ可能な施設があるのです。

ただし、自立の方は介護保険を適用できないため、施設としての収入は少なくなってしまいます。それが自立の方の受け入れを阻害する要因にもなっているのです。自立の方も受け入れているかどうかはホームページなどではなかなか確認しづらいので、直接問い合わせをしてみることをお勧めします。

 


それぞれの施設のメリットとデメリット


数が少なく入れる可能性の低い施設もありますが、ひとまずそれぞれの施設のメリットとデメリットを見ていきましょう。

【①サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)】2万7598戸
メリット:バリアフリー環境で自由な生活を送れる。初期費用が比較的かからない。
デメリット:医療専門職の常駐義務がないため、施設ごとにサービスに差が出やすくなる。また、重度の要介護になると入居継続が難しくなる場合も。詳しい内容は、以前サ高住について紹介したこちらの記事をご覧ください。

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【②健康型有料老人ホーム(民間施設)】488戸
メリット:イベントなどの行事や幅広い生活支援を受けることができるため、高齢の方でも安心して過ごせる。
デメリット:初期費用や月額費用が高額になりがち。何より施設数が少なく、近所では見つからない可能性も。

【③住宅型有料老人ホーム(民間施設)】9656戸
メリット:要介護度が高くなっても併設された在宅介護サービスを利用して生活を送れる施設が多い。
デメリット:初期費用や月額費用がかかり、さらに介護サービスも利用すると費用がかなり高額に。

【④自立型ケアハウス(公的施設)】5万9013戸
メリット:60歳以上の独居の方は居条件を満たすため、比較的入居しやすく費用も安い。
デメリット:要介護認定を受けると退去を迫られる確率が高い。

【⑤養護老人ホーム(公的施設)】3万5628戸
メリット:経済的に困窮している人が優先で、費用も減額または免除される。
デメリット:審査があるので、自分が入りたいという希望が受け入れられない可能性がある。

このように、要介護認定がなくても入居できる施設はいくつかあります。ただし、現時点での要介護度はもちろん、今後介護が必要になったらどうするのか、この先何年か払い続けることになるであろう費用をどうやって捻出するのかなど、さまざまな要因を検討して決める必要がありそうです。
 


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

 

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