非正規のほうが復職は難しい?


​ー​ー社会保険に入っていれば、傷病手当金をもらえるのは大きいですよね。正社員の方だと有給も使えるし、休職もできます。一方で非正規の場合だと、利用できる制度も少なく、復職が難しそうなイメージです。

田中:正規と非正規の違いとして大きいのは休職期間の有無です。正社員と言われる人で大企業にお勤めの方ですと、休職期間が長い傾向があります。麻痺や高次脳機能障害が中等度以上の場合、家に帰って自力でひとり暮らしできるまでに1年~2年かかることもあります。その場合、大企業で休職期間が2~3年あると、ギリギリ間に合うんですよね。後遺症があって、治療に時間がかかる場合はやはり休職期間が長いことはメリットです。あとは、大企業の場合は配置転換に関して仕事の選択肢が多く、人員や環境を整える体力もあります。例えばドライバーの職種で契約していた方が障害を持って、事務職だったらできるとなった時に、ドライバーと少ない事務職員で回している小規模な会社だと難しいかも知れませんが、大企業だと配置転換がしやすいです。

牧田総合病院の受付

田中:職種の幅の広さという点では、確かに大企業の正社員というのはいいと思います。ただ、私は実際患者さんの経過を見ていると、そうとも限らない事例もよく目にするんです。例えば、ある大企業のバリバリの営業マンだった50代の方は、障害による失語症で営業トークができなくなってしまったんです。2年間しっかりリハビリをして復職した時に、大企業ですし業績もあった方なので、喋れなくても通ってくれれば、処遇を変えずに定年まで働けるという条件が出されました。本当にできる仕事だけっていうと、簡単な事務とか営業日報の入力をゆっくりやって、電話も出ないでパートの方々と一緒に事務室にいるっていうことになりました。でも、元々やっていた仕事ができなくなったことが、その方にとっては苦しかったんです。だから経済的には苦しくなるかもしれないけれど、早期退職をして、奥さんがパートをしてゆったりと暮らすということを選択されました。