変化を受け入れれば、働けるポジションはある


田中:逆に、非正規の方でも元の職場に残っている方もいらっしゃるんです。パートでいろんなスーパーのバックヤードをされたり、調理の仕事をされたりしているご高齢で非正規の方がいました。就業規則としては休職期間はないので、一度は退職になっているんですが、職場はその人の働きぶりを知っていて、ちょっと忘れっぽくなったり、喋れなくなったり体力が落ちていたとしても、短時間からでもいいから戻って欲しいと言ってくれたそうなんです。今少子高齢化が進んで、労働者が足りないという中で、どこの職場でも求職者に対して人が足りない状況です。多少の障害や変化があっても、やってほしい仕事ができていれば企業側は雇いたいんです。障害を持った人が新たな生き方にも適応していくような心構えがあればチャンスが広がるし、そこに恩恵を受けている人を見ています。老いとか病気、障害による想定外のことは誰にでもやってくる可能性はあります。

 

田中:そういう時代に生きていこうとした時には、処遇や枠にこだわらずに、今の自分を買ってくれるところにチャレンジすることも必要なんです。正社員で手厚い処遇があってもかなり後遺症があって、同じ仕事ができない時に、心が持たなかったり、やりがいを感じられず転職を考える方もいたり。一方で全く別の新しい環境で、他の障害を持つ人と一緒に軽作業をやる中で障害を受け入れて新しい自分を見つける方もいたり。もちろんどうしても非正規で理解を得られないから辞めざるを得ない方もいます。個人的には病気や障害で大きく変化したときに、変わった自分を知るサポートを受けて、その時の自分に適した仕事に見合う処遇と折り合いをつけていく必要はあると感じます。

 

ーーケースバイケースというか、必ずしも非正規だから戻れないとか、仕事ができないってことはないということですね。

田中:大事なのは自分がどういう病気や症状を持っているかということを、医療機関や福祉の支援を受けて理解すること。そしてどんな病気や障害があっても諦めずに、自分にできることが何かを見つけてくれる支援機関枠を探し、そこで培った能力を生かせる職場にトライしていくことだと思います。


取材・文/ヒオカ
撮影/柏原力
 

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