——かなえのように、心の奥底に他人には言えない過去の記憶があり、後悔や罪悪感を抱えながら生きている人は少なくないと思います。真木さんの場合、そういうことを思い出して、落ち込んでしまいそうなとき、どんなことをして気持ちを切り替えたいですか?

真木:その出来事の種類にもよると思いますが、結局、何をしても一晩では忘れることができないと思うんですよね。お酒を飲んでも、ぐっすり寝てみても、悶々とした気持ちが晴れることはないのかなと。だから、時間が経って、自分のなかでその出来事を前向きに消化できる日を待つしかないと思っています。それを経験したから、以前よりも人の痛みに寄り添えるようになったんだ、とか……。そんな心境になれる日がくるという希望を持ちながら私は生きています。

 

——何らかの行動を起こして忘れようするわけではないんですね。

真木:そうですね。例えば人を傷つけてしまったのだったら、忘れることは相手に対して失礼な気がします。でも、自分がスッキリするために会いに行って謝ることも、なんだか自己中心的だと思うんですよ。だから、許してもらおうなんて思わないで、その人が笑って幸せに生きていくことを願うしかありません。それも自己満足なのかもしれないけど、自分を責めるばかりでは生きていけないから、ゆっくり時間をかけて自分を許してあげることも大事ですよね。

 

——考え方がネガティブになりすぎないために心がけていることはありますか?

真木:恥じない生き方をすることかな。後悔したくなる出来事があったとして、相手が「もういいよ」と許してくれたとしても、自分は忘れてはいけないんじゃないかと思っています。その経験と向き合って、それがあって良かったと思えるような生き方をしていかないと、いつまでも自分のことを好きになれない気がするんですよね。SNSの誹謗中傷とか、一方的に傷つけられた出来事はすぐに忘れちゃいますけど。たとえ意図的ではなくても、自分が人を傷つけてしまったことを簡単に忘れて生きていく人間にはなりたくないですね。

 
 

■インフォメーション
映画
『アンダーカレント』

 

豊田徹也の長編コミック「アンダーカレント」を実写映画化した究極のヒューマンドラマ。かなえは家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていた。ところがある日、悟が突然失踪してしまう。かなえは途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる。数日後、堀と名乗る謎の男が銭湯組合の紹介を通じて現れ、ある手違いから住み込みで働くことに。かなえは友人に紹介された胡散臭い探偵・山崎とともに悟の行方を捜しながら、堀との奇妙な共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していくが……。謎の男・堀を井浦新、探偵・山崎をリリー・フランキー、失踪した夫・悟を永山瑛太が演じる。「愛がなんだ」の澤井香織が今泉監督とともに脚本を手がけた。

配給:KADOKAWA
劇場公開日:2023年10月6日

【写真】真木よう子、5年ぶりの主演映画で気絶!? 「ただただ『ありがとうございます!』という気持ち」
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撮影/榊原裕一
スタイリスト/藤井希恵(THYMON Inc.)
ヘア&メイク/Miyuki Ishikawa (B.I.G.S.)
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩