作家・ライターとして「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。社会も価値観も変化していく令和の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは、夫から「オープンマリッジを提案された妻」。耳慣れないこの言葉は、ときに都合の良いように持ち出されるようで……?

 
取材者プロフィール
妻:いずみさん(35歳)。クリニックにて医療事務スタッフとして勤務。
夫:晴馬さん(35歳)。製薬会社のMR。現場中心で比較的融通がきく勤務形態。
 

学生時代から付き合って結婚した夫婦。平穏そのものだったはずが……?


オープンマリッジとは、夫婦間以外の性的な関係に対して、相互の合意の下に開かれている結婚の形のこと。近年、ドラマや小説などでも取り上げられることがあります。

定義上は、夫婦が所有欲、独占欲、嫉妬心に妨げられず、自由に「性的関係を持つパートナー」を作れるとされています。

結婚という言葉のイメージを根底から覆すかのようなこの考えについて、まだ充分に議論されているとも認知されているとも言い難く、保守的な日本でこの形をとっている夫婦は極めて少数と予想されます。

もちろん、夫と妻、双方のコンセンサスが取れていれば問題はありません。しかしもしもそうでなければ、これほど衝撃的な提案もないでしょう。今回取材させていただいたいずみさんはそのパターンで、突然夫の晴馬さんからそのような話を持ち掛けられたといいます。

一体彼は、何を思ってそのような考えに至ったのでしょうか?

「夫とは、大学時代からの付き合いで、お互いが25歳のときに結婚をしました。匿名の取材ですから包み隠さず話しますが、私も夫も、お互いが初めて付き合った人でした。社交的でも派手でもない、どちらかというと堅物な地方出身の大学生同士、平凡だけど楽しい交際でした。

社会人になって数年が経ち、部屋の更新時期が近づいて、そろそろ一緒に住む? それなら親に挨拶しないと、という感じでするっと結婚へ。盛り上がりには欠けるかもしれないけど、私にとっては充分、ドラマチックで大切な想い出です」

学生時代の恋愛を実らせたお2人。結婚してからも、大きな変化はなく、平和な結婚生活が始まりました。しかし、少しずつ、気になることが出現したといいます。