「男役の美学」から、「自分」と出合う芝居へ

 

——著書の中でも望海さんは「お芝居をもっと追求したい」と記されていました。歌唱は言うまでもなく、丁寧に役作りされる芝居の巧みさに宝塚時代から魅了されていたファンの方も多いと思います。改めて、ご自身の手で新たなトビラを開こうとされているのを感じます。

望海 私が宝塚を好きになったきっかけはレビューのほうだったので、芝居はどちらかというと難しいというか、あまり得意ではなかったんです……。普段の自分ではない自分になれることに楽しさはあったのですが、どうしていいのか分からなくて(苦笑)。苦手意識がありました。

宝塚でどういう男役になりたいかと考えたときに、宝塚にいるからこそできるものをお見せしたい、という気持ちがずっとあって、そういうものにばかり挑戦してきました。特にトップになってからは、宝塚だからこそ上手くオブラートに包むことのできる泥臭い役もやりましたし、逆に徹底的な“男の美学”みたいなものを届ける作品もやりました。そういった表現のできる男役をやっていて楽しいと思っていたんです。

でも辞めてからは、初めて会う皆さんとお会いして、芝居をつくらないといけない。そこで「面白い」と思ったのが、芝居をしていくうちに、相手の方も知ることができるし、自分のことも新たに知ることができるということ。宝塚ではずっと同じカンパニーにいたので、そんな気持ちになったことはあまりありませんでした。

 

——新しい場所に飛び込んだからこそ出合えた新しい想い。そうしたものを大切にされながら、歩みを進めていらっしゃるのですね。

望海 知っている同士の楽しさももちろんありますが、新しい方とのやり取りで生まれるものが自分の知識や感情をどんどん豊かにしてくれて、「ああ、これがお芝居をやるということの楽しさなのか!」と感じました。もっともっとお芝居をしたいし、いろいろな方と出会いたい。それを重ねることで、また違う自分とも出会えるんじゃないかと、そう思っています。


瞳をキラキラさせて、ご自身の「第二幕」を心から楽しんでいる様子をお話しくださった望海さん。後編では、ご家族との関係性など、プライベートについてもお話を伺っていきます。


インタビューの後編は11月15日公開予定です。
 

 

<書籍紹介>
『望海風斗 第二幕』
著者:望海風斗 日経BP 2530円(税込)

宝塚歌劇団 雪組の元トップスターで、現在は舞台を中心に活躍の場を広げる望海風斗さん。9月に初の書籍となる『望海風斗 第二幕』を刊行。本書は『日経エンタテインメント!』(日経BP)で2022年3月号にスタートした連載「望海風斗 Canta, Vivi!(歌って、生きて!)」をベースにしながら、退団から現在に至るまでの思いについて改めて行ったインタビューと、撮りおろしの写真で構成された一冊です。まさに、新しい人生を歩き始めた望海さんの「第二幕」がたっぷりと詰まっています。

 


望海風斗さん出演舞台情報
ミュージカル『イザボー』

 

2024年1月15日(月)〜30日(火)東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、2月8日(木)〜11日(日・祝) オリックス劇場にて。



ジレ¥132000、ニット¥58300、パンツ¥61600/LANVIN COLLECTION
ピアス¥111000、リング¥544500、ペンダント¥198000/Georg Jensen

【お問い合わせ先】
ランバン コレクション tel. 0120-370-877
ジョージ ジェンセン ジャパン tel. 0120-637-146


撮影/小野さやか
スタイリスト/早川和美
ヘアメイク/山下美紀
取材・文/前田美保
構成/金澤英恵