シングルマザーの平均年収は273万円

まずは相談を寄せてくださった由紀子さん。旦那さんがお亡くなりになってとてもお辛いと思いますが、少しでも楽になれる制度などをご紹介します。

死別したシングルマザーは、お金の心配はもちろん、子育ての不安、そして自分が倒れてしまったらという健康状態の不安に加え、「保険金が入って裕福なのでは?」と心無い言葉を掛けられることがあるかもしれません。ですが人にわかってもらおうと頑張る必要はないと思います。今回はお金の問題を中心に取り上げますが、問題をまとめて考えるのではなく、1つ1つ考えていく方が楽になるかもしれません。

厚生労働省が行った「全国ひとり親世帯等調査」によると、2021年時点でのひとり親世帯は134.4万世帯。ひとり親世帯になる理由は、母子家庭・父子家庭ともに離婚が8割弱を占め、他に死別や未婚が続きます。

ひとり親世帯になった時の末子の平均年齢は、母子世帯では4.6歳。子育て真っ只中の年齢でひとり親になってしまうにも関わらず、平均年収は273万円という結果が出ています。

真剣に離婚を考えている方であれば、お金のことまできっちり調べて決断されると思いますが、漠然と離婚を考えている方や今回の相談者・由紀子さんのように死別してしまった方のために、ここで改めて自治体の頼れる子育て支援について見ていきましょう。

 

市区町村の子育て支援課で相談できる制度

市区町村の子育て支援課で相談できる制度には、主に以下の5つがあります。

① 児童扶養手当
子どもを育てるひとり親や祖父母を対象とした国の公的支援制度で、子どもが18歳になった次の3月31日を迎えるまで、2ヵ月に一度、決まった金額が支給されます。所得に応じて手当の額が異なり、親と子の2人世帯の場合、年収160万円未満は満額の4万4140円が支給。支給額は段階的に減り、年収が365万円に達すると対象から外れます。

② 子ども医療費助成制度
子どもにかかる医療費の全額、または一部を補助する制度です。自治体によっては「乳幼児等医療費助成制度」という名称のところも。病院や薬局の支払額が免除されたり安くなったりしますが、年齢や割合など条件は自治体ごとに異なります。

ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭の医療費をサポートする制度で、子どもに限らず保護者の医療費も対象となっています。具体的な内容は自治体によって異なり、所得によっては受けられないこともあります。

④ 子育て短期支援事業
親が仕事や病気になった時などに一時的に子どもを預けられる制度で、1週間程度泊まりで預けられるショートステイと夕方から夜間にかけて預けられるトワイライトステイがあります。送迎も相談可能で、事前面談が必要となります。

⑤ ファミリー・サポート・センター事業
子育てのサポートを受けたい人と手伝いたい人が会員となり、相互に助け合う事業で、ファミリー・サポート・センターを通して登録します。保育園の送迎や放課後の一時預かりなどが可能で、利用の際はお互いの顔合わせを行います。

これら5つの制度以外に、市区町村独自の支援もあります。インターネットで「ひとり親支援」や「子育て支援+市区町村名」などで調べてみてください。

死別の方は遺族年金も

年金は「65歳以上の高齢者が受け取るもの」というイメージがあると思いますが、今回の相談者・由紀子さんのように一家の大黒柱が亡くなってしまった場合、「遺族年金」と呼ばれる年金を受け取れます。

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなったとき、その方によって生計を維持されていた遺族が2ヵ月に一度、決まった額のお金を受け取れるというもの。金額は払込期間や子どもの人数によって異なりますが、300万円の収入で子ども2人の場合は年間100万円。知らないと損をしてしまいます。

国民年金の方は自治体の国民年金窓口、厚生年金の方は年金事務所に問い合わせをしてみてください。

子どもの「学びたい」を応援する制度

ひとり親家庭に限らず、高校卒業後に進学を希望する住民税非課税世帯またはそれに準ずる世帯の方は、高等教育の修学支援新制度があります。大学・短期大学・専門学校の授業料の免除、返済不要の奨学金がもらえるというもので、生活費のサポートも可能です。詳しくは、文部科学省のホームページをご確認ください。

自治体によっては、大学生などが無料で勉強を教えてくれる学習支援事業を行っているところもあります。宿題や試験前、受験期の対応も可能です。利用するには条件があるので、自治体に確認してみてください。

また、児童・生徒の問題に対し、保護者や教員と協力しながら問題の解決を図るスクールソーシャルワーカーという専門職の方もいらっしゃいます。家庭問題が学校生活に影響を及ぼしてしまったときなどにアドバイスをもらうことができるので、名前だけでも覚えておいてください。

最後に渋澤より、今回は社会保障制度の一部を紹介するという堅苦しい内容になっていますが、これらは非常に大切な知識です。今回の例だけでなく、生活の中でお金や今後の不安があった場合、社会保障制度は使えるかな、と情報を集めてみてください。ご自身だけでなく、周りの方で困っている人がいたら、教えてあげてみてはいかがでしょうか。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

前回記事「【高齢親のかかりつけ病院の探し方】どんな観点で探すべき?経験者が語る「外せないポイント」」>>

 
 
 
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