特定の食品を摂ることで「オートファジー」を活性化できる!

天然の食品成分の中にオートファジーを活性化する成分がいくつも見つかっています。もっとも有名なのが「スペルミジン」です。納豆や、熟成したチーズ、豆腐、しいたけ、しょうゆ、味噌などに豊富に含まれています。

スペルミジンはオートファジーの研究が盛んになる前から注目されていました。食事の調査によってスペルミジンを含む食べ物を多くとっている人ほど、心不全などの心血管疾患のリスクが低下することを示した研究があります。また、100歳以上の人にはスペルミジンが体の中に多いとの報告もあります。動物実験ではスペルミジンによって寿命が延びることもわかっています。

スペルミジンに関して、オートファジーの働きによる人体への効果として良くわかっているのは、病原体から体を守る「抗体」への作用です。人間の抗体をつくる細胞は加齢によって機能が低下します。高齢になると抗体ができにくくなるのはそのためです。

お年寄りの人の抗体を作る細胞を取り出してスペルミジンをふりかけて実験したところ、オートファジーが活性化して細胞が元気になり、抗体をつくれるようになったデータがあります。ですから、免疫力の低下にオートファジーは有効といえます。

また、最近の研究ではスペルミジンが、お年寄りのがんに対する免疫を回復させたという論文も発表されています。これはオートファジーによる効果かはまだわかっていませんが、その可能性が高いと私(吉森)は考えています。スペルミジンは人間の体内でもつくられる物質ですが、加齢とともにつくれる量が減ります。高齢な人ほど食事から補うのは効果的です。

オートファジーを活性化させる食品の一例

特定の食品が持つ成分をとると、オートファジーが活性化する。寿命を延ばす成分があることも動物実験で確認されている。

スペルミジン以外でもオートファジーの活性化を後押しする食品成分はわかっています。例えば「ウロリチン」です。

ウロリチンはザクロやベリー、クルミなどナッツ由来の食品素材に含まれます。オートファジーは「細胞内の掃除役」とお伝えしましたが、ウロリチンにはその働きをサポートする作用が確認されています。

 

また、動物実験ではウロリチンの働きで線虫の寿命が1.2倍長くなったことも報告されています。これはオートファジーが健康寿命を延ばす可能性を示しています。

赤ワインやブドウに含まれるポリフェノールの一種である「レスベラトロール」もオートファジーの活性化を促します。レスベラトロールは寿命を延ばす働きがあることが動物実験で確認されています。これがオートファジーの効果かははっきりしていませんが、レスベラトロールを摂取すると長寿につながるのは間違いありません。

他にも、アスタキサンチン(カニやエビに豊富)、カテキン(緑茶や抹茶に含まれる)などもオートファジーの働きを高める成分として知られています。