脳の老化は、「老害」の一因。前頭葉活性化のカギは「物語」

 

加齢にともなう脳機能の低下は、老害を引き起こす一因です。脳の前頭葉は感情や行動の司令塔で、それが老化して縮むと、感情をコントロールしにくくなります。前頭葉の萎縮は40代ごろには始まっているといわれます。

なにもしないと萎縮が進み、50代ぐらいから、がんこになる、怒りっぽくなる、思い込みが激しくなるといった傾向がみられるようになるでしょう。和田秀樹氏は『老害の壁』のなかで、これを「性格の先鋭化」と表現し、「がんこな性格の人はよりがんこになる」と書いています。

前頭葉は想定外のできごとに対処するときに活性化するので、毎日同じような生活を送るのを避け、なにか変化をもたせて脳の老化を防ぐことが大切。散歩を日課にしているなら、いつもと違うコースを歩いてみるだけで、前頭葉への刺激になります。

わたしは仕事の合間を縫って映画を観に行きます。映画館や作品が異なると、それまでとは別の刺激を受けます。映画にかぎらず、舞台や歌舞伎など、目の前で「物語」を鑑賞すると、作中のできごととともに自分の脳も「冒険」するため、自然と活性化されるのです。外出しない場合、読書やドラマ鑑賞でも、脳は刺激を受けます。

毎日、同じような生活を繰り返すうちにマンネリにおちいるのは、前頭葉を老化させる原因のひとつ。たくさんの「物語」に触れることは、時間に余裕のある高齢者にとって、うってつけの「脳の刺激薬」になるはずです。

 


著者プロフィール
一条真也(いちじょう しんや)さん

福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。大学時代から小笠原流礼法を学び、1989年には小笠原家惣領家第32代当主・小笠原流礼法宗家の小笠原忠統氏から免許皆伝を受ける。冠婚葬祭大手 (株)サンレー代表取締役社長。九州国際大学客員教授。全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)会長、(一社)全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)副会長を経て、現在、(一財)冠婚葬祭文化振興財団副理事長。2012年、第2回「孔子文化賞」を故稲盛和夫氏(稲盛財団理事長)と同時受賞。上智大学グリーフケア研究所の客員教授を務め、全互協のグリーフケアPT座長としても資格認定制度を創設。日本におけるグリーフケア研究および実践の第一人者としても知られる。各地の老人会を回り、「人は老いるほど豊かになる」と題する講演活動をボランティアで行なう。著書に『供養には意味がある』(産経新聞出版)、『人生の四季を愛でる』(毎日新聞出版)、『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)、『儀式論』(弘文堂)、『決定版 終活入門』(実業之日本社)、『葬式は必要!』(双葉社)、『決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)などがある。

 

 

『年長者の作法 「老害」の時代を生きる50のヒント』
著者:一条真也 主婦と生活社 1650円(税込)

冠婚葬祭業の会社を経営しながら、小笠原流の礼法家としても活動する著者が、シニアが気持ちよく暮らしていくための考え方、日々のふるまい方・作法を解説。その時々で必要な項目だけを読み返すことができる便利なページ構成になっていたり、周囲に好印象を与える礼法のハウツーを図解で掲載していたりと、とても実践向きの内容で、老親へのプレゼント本としてもおすすめです。



写真:Shutterstock
構成/さくま健太