ポイント2 不確かな状況を受け入れる


編集:自律神経失調症」について解説いただいた際には、「不確かな状況を受け入れる」という考え方を学びました。

山田:そうですね。血液検査やいろいろな検査を受けたけれども原因を突き止められなかった、ということの裏返しで、症状はあるものの明らかな異常がないため説明する言葉がなく、「自律神経失調症」という言葉が使用されている可能性について解説しましたね。

「原因がわからない場合がある」ということを、医師はもちろん患者さんご自身もご理解いただく必要がある、というのも大切なポイントとしてお伝えしました。

編集:「自律神経失調症」という言葉が実際に医療現場で使われている言葉と乖離していたり、実際の自律神経障害と異なる症状をイメージしていたりと、かなり曖昧な認識だったことがわかりました。ただ、原因不明の体調不良があると、やはり不安になるので、インターネットや書籍で調べてそれらしい病名がわかると、少し安心するんですよね。

山田:不確実性は、不安なものです。でも、不確実性を受け入れられるかどうかは、医師の能力としても非常に大切なことなんですよ。

たとえば、お腹が痛いという主訴で入院になった患者さんのうち、3~4割程度は原因が明らかにならなかったとする報告もあります。病名がわかると安心しますが、その安心は、「偽物の安心」である可能性もありますよね。特に医療の現場では、不確実な方が健全である、ということもたくさんあると思います。

 

ポイント3 何事にもリスクとベネフィットがある


編集:また、健康診断と人間ドックの違いについての解説も、非常に印象に残っています。検査にもリスクがあるなんて、考えたこともありませんでした。検査は、すればすれほどよいのでは? と思っていましたから。

山田:検査に限らず、どんな薬や治療法にも、必ず「リスク」と「ベネフィット」の両面があり、ベネフィットがリスクを上回ると考えられる時に、その薬を使う必要がある、その検査や治療法を受けると判断をする、というお話ですね。

編集:はい。何事にもリスクとベネフィットがある、ということについては、「漢方薬の副作用」の回や、「カフェインのメリット・デメリット」の回などでもテーマを変えて繰り返し解説いただいて、だんだんと理解が深まっていきました。

さらに、「何事にもリスクとベネフィットの両面がある」ということだけでなく、毎回丁寧に、何が「リスク」で何が「ベネフィット」か、その場合どんな選択をすべきか、ということまで説明してくださったので、とてもわかりやすかったです!

ポイント4 一度冷静に立ち止まる


山田:私はニュースやテレビのコメンテータをする立場にありますが、報道はその特色上、「よい」か「悪い」かの、どちらか一方に傾きやすいと感じています。ただ、繰り返しになりますが、物事には必ず両面があるので、コメントや記事を出すときは、必ずリスクとベネフィットの両方についてふれるよう、気をつけています。

編集:乳製品は体によいか悪いか」という内容を解説いただいた時に、文章の書き方や順番だけで、いくらでも特定の食品や治療法、検査についての印象操作が可能なんだ、ということも学びました。

山田:そうですね。「これであらゆる不調が改善する」「最新の研究でわかった効果的なサプリ」のような、よい面あるいは悪い面の、どちらか一方ばかりを強調した衝撃的なニュースや広告などを見かけた場合にも、「一度冷静になる」というのは非常に大切だと思います。

編集:以前は違和感を感じることは少なかったのですが、今では、最新のサプリや治療法、検査なども、不自然によいことばかり書いてある広告やHPを見ると、一旦立ち止まって「本当かな?」と考えるようになりました。