好きだけど、性的な部分で温度差が…

またこの問題は、お話を深ぼると2人の関係性にも原因があるようです。

「実は当時、すでにセックスレス気味だったことも懸念の一つでした。彼女は僕からしたら淡白で、少し神経質なところがあって。少しでも明るい場所は嫌だとか、前後の念入りのシャワーは必須とか。同棲中に猫を飼ったんですが、すると猫がいる家ではできないとか。でも、ラブホみたいなところは行きたくないとか……。

彼女のことは本気で好きでしたが、性的にはあまり相性がよくないというか、温度感が違う物足りなさがあったんです」

けれど、2人は喧嘩や話し合いを重ねるうち、この問題は少々うやむやになり結婚することになりました。恋人同士の恋愛感情は、無意識であっても問題から目を逸させるパワーがあるのだと思います。

「たぶん妻は、なんだかんだ結婚すれば僕は変わるし、『夫』としてそれなりに収まると思っていたんでしょう。でも僕は逆に、永遠の愛とか一途な夫を目指すことを諦めました。

けっこう真剣に考えた結果ですが、それに縛られると思うと苦しかったし、そもそもあの仏陀だって『この世の物事は常に変化し、不変なものはない』という『諸行無常』なんて名言を作って長年で支持されているのに、結婚はこれに完全に矛盾するじゃないか? と思って」

仏陀を例に出されると、たしかにその通り……と思いますし、世の中に不変なものはないというのは真理だと思います。ただ筆者個人的には、結婚は真理に基づいて考えるものではなく、当然生じる不変を受け入れながらも、愛する人と生涯を添い遂げるという覚悟を理性で保つ約束なのかな、と考えます。もちろん、簡単なことではありませんが。

また性欲の相性については、男女関係において解決が難しい問題の一つだと思います。

 

「結婚後、結局何度か浮気をしましたが、夫婦関係はそれなりに成り立っていたと思います。ですが娘が生まれてから、またいろいろと問題が出てきました」

ちょうどその頃、篤史さんはご自身のキャリアを見つめ直し、務めていた会社を辞めて独立を決意しました。この転機はたまたま娘さんの誕生と重なったものでしたが、結果として夫婦関係がこじれていったようです。

 


「僕にとって、仕事を辞めた直後の時間は『独立の準備期間』として大事なものでしたが、アパレルの会社を拡大し相変わらず多忙な妻にとっては、僕が『専業主夫』になったような感覚だったみたいで。

彼女は仕事に行ってしまうので、生後まもない娘をワンオペで育てる日々が始まりました。男性には共感してもらえると願いたいですが、もちろん我が子は可愛いものの、なかなか『父親スイッチ』が入らなくて。父親としての自覚、みたいなのが安定しないまま乳児の面倒をみるのは本当に大変でした」

父親が主体的に子どもを育てるというのは素晴らしいことだと思います。

ですが、予期せぬ展開の結果、そして心の準備もままならぬまま乳児と向き合うのは、現実的に非常に苦労したことは予想できます。

また産後は当然ながら、夫婦の時間は激減。育児の押し付け合いで2人の関係はピリつくことも多く、また妻は性的なことに対してますます関心が薄くなってしまったのです。

来週の続きの記事では、育児ストレスや夫婦関係に限界を感じた篤史さんが風俗に月に10万円以上も使ってしまったエピソード、さらに浮気相手に本気になってしまったお話を伺います。
 

写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙
 

 

 

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