不倫相手と家庭の往復が辛い


「でも、風俗でさんざん散財をしていたとき、突然ハッと気づいたんです。周りを見ると、マッチングアプリや飲み会なんかで女の子と知り合って、彼女やいわゆるセフレを作ってる男友だちがいるんですよね。

彼らは独身で僕は既婚なんで仕方ないとは思いつつ、楽しくデートしてる様子なんかも楽しそうで、ついモヤっとしてしまって」

妻側の視点からすれば、絶望的な流れだと思います。仕事と育児に奮闘する自分と最愛の娘を置いて、夫は外で何をしているのかと……。ただ、こうして正直な心情を聞いていると、男性側の辛さというか、寂しさもよく伝わってきます。

我が子が可愛いこと、妻を愛していることとは別に、自分にとっては深刻な性欲・妻と繋がりを持ちたいという問題に応えてもらえない、解決口がうまく見つからないことで、強い孤独感が芽生えている印象を持ちました。

「最初は、僕の店のお客さんや、友人の集まりで出会った女性と関係を持ったりしました。相手も既婚者で、そんなに深入りせずに短期で終わることが多かったんですか……」

ライトな婚外恋愛に慣れてきた頃、篤史さんはサークルの同窓会で大学時代の同級生と遭遇。実は昔好感を持っていた彼女はまだ独身で、保育士をしていました。

「結論から言うと、彼女に本気になってしまったんです。子どもの話で盛り上がったので、本来真面目な彼女も打ち解けやすかったのかもしれません。学生時代の友人だったこともあり、お互いあまり警戒もせず急激に仲良くなりました」

2人はまもなくして恋愛関係となり、さらに休日には娘さんと一緒に出かける仲にまで発展しました。篤史さんは週末のどちらかは相変わらずワンオペで過ごしていたので、親子ともに彼女といると楽しかったのだそうです。

「なんというか、彼女の前では、僕は久しぶりに無邪気な子どもみたいな自分になれました。彼女はすごく母性が強く家庭的で、女性性が強いタイプというか……言ってしまえば、奥さんとは正反対の女性です。

母性の塊みたいな彼女には自然に甘えてしまうし、甘えられるのも心地いい。それまで僕が無意識のうちに抱えてた孤独みたいなのが癒されたんです」

禁断の展開に背筋がヒヤヒヤ、胸が痛くなりながらも、男性はこうして恋に落ちるのかと妙に納得してしまいます。そして、実は女性よりも孤独感が強いのかもしれません。

ただ、こうした気持ちの盛り上がりは恋愛初期にありがちなもので、特に家庭や仕事がある場合は長く続くほうが難しいのでは? と感じます。また、前回の記事で妻と出会った頃の話では、「自立心と行動力があり、自分にないものを持っている彼女に惹かれた」と篤史さんはおっしゃっており、根っから家庭的な女性が好みであったわけでもないはずです。

「不倫相手に本気になった自覚」はどのように芽生えたのでしょうか?

「彼女との将来が頭をよぎるようになったんです。彼女となら仲良く子育てをできるかもしれない、おじいちゃんおばあちゃんになってもニコニコ笑っていられるだろうな、とか。

それで、彼女といると楽しく癒され安心できる一方で、本来そういう場であるべき家庭の方はいつも緊張感に満ちて心が休まらない。その行ったり来たりが、すごく辛くなってきたんです」

心を奪われてしまった女性と、大切にすべき家庭。

その間でしばらく揺れるうち、結果としてさらにストレスを抱えてしまった篤史さんは、「このどうしようもない関係が続くならいっそ……」と、なんと妻に現状をすべて暴露するという行動を起こすことになります。

来週公開の記事では、その結果激痩せするほど精神的ダメージを負った篤史さんの末路、事実離婚として徐々に落ち着いた夫婦関係、そして不倫相手の女性のその後についてお話いただきます。

 
写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙
 

 

 

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