映画『エゴイスト』

『エゴイスト』 U-NEXTにて配信中 © 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

予告や俳優陣を観て内容や演技に期待を持った人も多いと思いますが、期待に応えてくれるだけでなくそれを上回ってくれる作品です。もう、鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんの演技が素晴らしいのは観る前からわかっていたことなのですが、それにしてもここまでとは……という素晴らしさでした。鈴木さん演じる浩輔と一緒に、どんどん宮沢さん演じる龍太に惹かれるような感覚というか、単純に人として愛おしいなという気持ちになっていきます。

 

一方で気になるのは『エゴイスト』というタイトル。どちらかがどちらかを裏切るようなことになってしまうのでしょうか。何が起きるのか、息を呑みながら見守っていました。結果、このタイトルの理由はまったく予想できなかったものでした。そして、この物語に起こる展開も予想外でした。

同性愛を扱っている映画であることが注目されており、それも事実ですし、そういった描写を取り入れている作品の中でも素晴らしいものだったと思います。でもそれ以上に、もっと広い”愛”について描かれた作品だということに気づきます。

浩輔と龍太、そして龍太の母である妙子(阿川佐和子)、3人がどうしようもなく愛おしい。作中で、浩輔が妙子に「愛が何なのかなんて、僕にはわからないです」というシーンがあります。愛が何なのかなんて、私にも分かりませんが、この作品には愛が描かれているのは間違いない。それだけは自信を持って言えます。そんな作品です。