「失敗」が少ないと「ストレス対処力」は上がらない


——それは、真面目な方は慎重すぎて、なかなか行動を起こさないとか、そういうことでしょうか?

舟木:端的にいえばそうです。もっと詳しく言うと、完璧主義で真面目な人は「一度の失敗」で萎縮してしまうので、挑戦しない・行動しないという選択をしてしまう。結果、経験値が少なくなりがちです。ですが本来、「なんとかなる」と思える土台は「失敗体験」なんですね。もしかしたら、成功体験より大事かもしれません。

成功体験は、失敗体験があって成り立つものです。「水清ければ魚棲まず」と言いますが、人間も泥水を啜るような経験をしないと、困難やストレスへの対処力は上がりません。例えて言うなら、社会という複雑な生態系の中でいろんな菌やウイルスへの免疫をつけるためには、若いうちから泥水を啜っておいた方がいいんです。

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——失敗も、自分がステップアップするための必須条件だと思えば、失敗に対してちょっと意味付けができますよね。

舟木:物事を成し遂げようとした場合、失敗と成功の両方の側面がありますよね。だから失敗したとしても、そのうち15%ぐらいは、「この部分はうまくいったな」という部分が絶対にあるはず。失敗ばかりにフォーカスするのではなく、「うまくいった」部分もきちんと着目してあげることが大切です。

大きな失敗を経験するほど、「自分はあれほどの失敗をしたのだから、この程度はなんとかなる」と思えるようになります。あとは、あらかじめ失敗した場合のシミュレーションをしておくといいですね。ここが失敗した場合はこの人に助けてもらおう、とか。

 

——社会も失敗に寛容にならないといけませんよね。お笑いコンビ・和牛の解散騒動では「遅刻」がSNSで話題になっていて、中には「一度の遅刻も許されない、人として信用できない」というコメントも。それだけで人間失格の烙印を押されたら、失敗もできないです。

舟木:一度の失敗で一発退場になってしまう社会だから、失敗体験を積めないというのもありますよね 。「次頑張ればいいよ」と言ってくれる環境が理想ですけど、上司って「失敗してもいいよ」と言いながらも、実際に失敗すると猛烈に責めたりする。言行不一致な人が周りにいると、予測不可の感覚により「だいたいわかった」と思える把握可能感が低くなり、どうしたらいいかわからなくなりますし、ストレス対処力も下がってしまいます。