恋する人と恋しない人のシスターフッド


2023年に放送された『今夜すきやきだよ』(テレビ東京、谷口菜津子による同名漫画が原作)はザ・恋愛体質な太田あいこ(蓮佛美沙子)とアロマンティックの浅野ともこ(トリンドル玲奈)が同居し、世間のあらゆる“当たり前”と格闘する物語。

 


常に恋愛をしているあいこと、他者に恋愛感情を持たないともこという超正反対のふたり。ともこはあいこの恋愛の悩みにそっと耳を傾け、一緒に悩む。ともこが恋愛至上主義の呪いにやられているときは、あいこが相談に乗るし、恋をしない自分は欠けてるじゃないか不安だったと吐露するともこに、あいこは「ともこさぁ、別に欠けてなんかないからね」と言う。

 

価値観や思想は違っても、相手を否定せず、思いやり、認め合うことはできる。ふたりの関係性を見るとそんなことを思わされます。恋愛しないともこは、なかなか周囲に理解されなかったことを振り返り、「理解できなくても、見守っててほしいってずっと思ってた」とつぶやきます。これってセクシャリティに関することだけでなく、あらゆる人と人との違いについて言えることだよなあ、と感じました。



恋愛以外の多様な「愛」を描く


『最愛』(TBS系)は純愛ドラマでしたが、ある意味恋愛至上主義からは外れたドラマだったように感じます。主人公と幼馴染は最終的には恋仲となりますが、お決まりの強引なキスなどがなく、繊細な描写で、お互いを想い合っている様が伝るようなつくりでした。このドラマには、“同時並行的”に登場人物それぞれの「最愛」が描かれます。


姉弟愛、血のつながらない家族のような存在への愛、部下への愛、息子への愛。どれも恋愛以外の愛ですが、切実で、命がけの愛です。それらの愛と、主人公と幼馴染の恋愛文脈の愛は並んでおり、どれが一番強いとか大きいとかではない。どうしたって恋愛至上主義では恋愛が「最上級」に据えられがちですが、『最愛』ではすべての愛がみな等しく価値のある、純粋で強烈な愛として描かれるのです。