絶望的な現実の中で見える、一筋の光

Netflix映画『ロ・ギワン』独占配信中

さて、ストーリーは中盤以降からベルギー国籍を持つ韓国出身の女性、マリの人生や、ギワンとマリの関係の変化にスポットライトが当たり、ラブストーリー寄りに展開し始めます。

 

ベルギーで生きる権利を得るため、命懸けで闘うギワンに対して、マリはベルギーの国籍を持ち、裕福な家庭に生まれ育ちながらも、人生に対して自暴自棄になっている女性。共通点は母親を亡くしたという点だけで、まるで正反対の二人。

後半がラブロマンス寄りに動き始めたことで、少し物足りなさを感じる人もいるかもしれません。(ちなみに映画の原作となっているのは、韓国の小説『ロ・ギワンに会った』なのですが、マリとのロマンス要素は、原作小説にはなく映画で追加した要素だそう。)

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しかし、ギワンとマリが心を通わせていく様は、絶望的なストーリーの中での一筋の光として、癒し的要素となっています。対照的な二人がお互いを埋め合うようにして生きていく姿が、辛くて苦しい現実の中の唯一の救いのように見えました。

序盤の重苦しい描写を一気に吹き飛ばすほど、心が温かくなったシーンがあります。それはギワンがマリを部屋に招いて、食事を作ってあげる場面。

ご飯とテンジャンチゲ(味噌チゲ)、ギワンが働いている食肉工場の肉と、市場の残り物の野菜……という質素な食事なのに、とびきりのご馳走に見えるから不思議。二人の間にほとんど会話という会話はなく、ただ黙々とご飯を頬張るだけのシーンですが、確実に二人の間に絆が生まれた瞬間だと感じました。

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ご飯を食べることは生きること。そして誰かと心を通わせること

韓国ドラマや韓国映画は、食事シーンを効果的に使っている場面が多いように感じます。

韓国では挨拶がわりに「ご飯食べた?」と聞くのは有名な話。その歴史的背景として、その昔、食べ物に困った時代が長かったことから、ご飯を食べたかどうかを聞くことが、相手の健康や安否を気にかける挨拶なのだという説をよく耳にします。

ギワンとマリがご飯を食べるシーンはまさに、食べることは生きることであり、「誰かと食事をすること=誰かと心を通わせること」なのだと暗示している気がしました。

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ヒロインのマリを演じたチェ・ソンウンの韓国語とフランス語の2ヶ国語演技も素晴らしいです。これまでもドラマ『怪物』『アンナラスマナラ』などに出演してきましたが、本作での並々ならぬ存在感で、さらなる注目を浴びたはず。今後ブレイクの予感です!

Netflix映画『ロ・ギワン』の見どころを解説しました。映画という短い時間の中では語りきれない部分も多く、ロ・ギワンが脱北者として、どのような道を歩んだのかじっくりと知りたい気がしました。原作小説『ロ・ギワンに会った』も読んでみようと思います!

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構成/山本理沙
 

 

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